教師に必要な授業力とは何か
授業の根幹には、教師と子どもとの間に人間関係ができていることが不可欠である。教師は何よりも、子どもの心をつかんでいなくてはならない。そのためには、教師の人間的な魅力と迫力が求められる。暖かく親しみやすい人柄、毅然とした態度、りんとした声の張り、相手の心に届く言葉といったことが重要である。私の頭に浮かぶのは国語の教師であった大村はま先生である。人間的な魅力や迫力の点はどうも、という教師は毎日の教師生活が地獄となるであろう。
授業の場として,どのような学級かが重要性を持つ。教師と子どもの気持ちが「打てば響く」ような学級にしなくてはならない。それには、「暖かく支え合う」「どの子も積極的な姿勢を持つ」「規律ある雰囲気がある」学級でないと、がっかりするような授業になってしまう。
授業づくりで大事な点として目標と見通しを持つことがある。学年ごと、単元ごとに教育成果として現われてほしい願いとねらいを明確化する。それと関わり、本時のねらいをはっきりさせることである。二年生の国語であれば、読解力を学年末までにどういう具体的力が身につかないといけないのか、はっきりさせてみる。
つぎに指導計画をどうつくるかがある。
(1)子どもの心を開くには「おやっ、どうして」とつぶやきが出るような工夫をして「やってみたい、考えてみたいなぁ」と気持ちを起こさせるようにする。
(2)「ポイントをきちんとわからせ、身につけさせる」ためには教え示していかなければならい。例えば算数の「くりあがり」は順を追って分からせていく。
(3)練習したり、工夫したり、実際に取り組んで「なるほどなあ」と腑に落ちて分かるようにする。
(4)授業は盛り上がったけれど、子どもは大事なことを何ひとつ分かっていないことがある。だから、途中で小テストや、自己評価を書かせて、確かめることが必要となる。
実際の授業で一番大事なのは、臨機応変ということであろう。授業のその時その場で、子どもたちの反応をよく見ながら、次に何を言い、何の活動をさせたらいいのだろうと悩むことではないだろうか。それが授業での発見であり創造である。
授業は最後には、教師の人間としてのあり方そのものが決め手になる。だらしない教師に日々接していれば、学級の子どもたちもだらしなくなっていくであろう。教師に出会ったことで子どもの人生が転換することもある。教師が人間としてのあり方・生き方をどのように深めていくかという問題は、非常に重いものと言わねばならない。
(梶田叡一:1941年島根県生まれ、国立教育研究所研究員、京都大学教授、兵庫教育大学学長等を歴任して奈良学園大学長。中央教育審議会副会長、教育課程部会部会長。人間教育研究協議会代表。教育心理学者)
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