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傷つきやすく弱みを見せられない親が増えている

 なぜ最近のお母さんたちは、おたがいの意見をぶつけあわなくなってしまったのでしょうか。基本的には、自分の弱さもふくめて、ありのままの自分を見せられるのは、ある程度、相手に対しても、自分に対しても肯定的でなければできないことですが、最近はとても傷つきやすくて、絶対に自分の弱みは見せられない、という人が増えています。
 たとえば、カウンセリングの研修のために、私たちは症例の検討会を開いて、たがいに切磋琢磨することがあります。かつて若いころには、技能を磨いていくために、かなり厳しいやりとりが、ごくあたりまえのこととして行われていたのですが、最近、同じようなきびしい質問が出されると、傷つけられたように感じてしまう人が多くなっているようです。
 カウンセラー同士のトレーニングにおいてさえそのような状況ですから、おたがいに意見をぶつけあって、切磋琢磨しあう関係を作るというのは、なかなかむずかしい状況になっているのかもしれません。
 しかし、そうやって大人自身が自分の殻にはいって、自分を守ってばかりいては、とうてい、子どもは精神的にタフになりようがないのではないでしょうか。大人同士がもっと密接な関わりをもって、フランクにつきあえるようにならなければ、子どもだけがそうなれるはずはないからです。
 とくに90年代に入ってからのお母さんたちは、みんなどこかよそゆきの顔をして、素顔のままではつきあえない人が多くなっているようです。お母さんが会社員のときは、会社の中で人間関係をそつなくこなす世界にいるため、当たりの柔らかな仮面をつけている必要があったかもしれません。
 しかし、子育てというのは、それとまったく違った世界です。親子であれ夫婦であれ、四六時中向き合って、生身の自分をぶつけあう世界ですから、とても0L時代のように過ごせるはずがありません。
 最近、表面的には優しそうなお母さんが増えていますが、本当のところはホンネが出せなくて、苦しいのではないでしょうか。そうやって無理をしていると、心身のバランスを崩したり、心ならずも虐待に近い行動におよんでしまう、ということになりかねません。
 ですから、できないことはできないと、お手上げして周囲の人に協力を求めたほうが安全です。みんなどこかに“情けない”部分をもっているのが人間ですから、おたがいにそういう弱い部分も出しあって、補いあって生きていく。それを大人自身ができるようになれば、子どもも、もっと気軽に助けを求めることができるようになるのではないでしょうか。
(三沢直子:1951年生まれ、元明治大学教授。臨床心理士として心理療法など子育て中のお母さんをサポート。NPO法人コミュニティ・カウンセリング・センターなどで、子どもや家族の問題に関わっている職員の研修や、地域のネットワーク作り、親教育支援プログラムの普及に努めている)

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