« 教師は世間や人生の解説者ではない | トップページ | 明治後期の教師の実態とは »

生徒に合わせて叱り方を変える

 A君は家庭の事情で、ほとんど毎日のように遅刻して登校する。忘れ物も多く、提出物もまともに出さない。授業もあまり集中できない。
 だから、担任が細かく叱っていたら、朝から帰りまで、1日に何十回も叱ることになるだろう。叱る側も叱られる側も憂うつになってしまうのは確実だ。
 こういう場合は、A君が人に迷惑をかける行為には必ず注意するが、他のことは全部は注意せずに適当に間引いて注意する。私はこれを「間引き注意」と呼んでいる。
 この「間引き注意」には、必ず他の生徒から不満が出てくる。だから、A君に了解をもらって、事前に、学級の生徒には理解させておく必要がある。
 「みんなの中には、先生が他の子が同じことをすると厳しく叱っても、A君には叱り方が甘いと感じている人がいるようです。同じ行為をしても、叱り方は同じになるとは限らないのです。A君にはいろいろな事情があって、これまではしっかりとした学校生活を送ってこれませんでした。でも、彼は両親の助けもあって、今、やり直そう思っているのです。そういうときに、一から十まで注意をされたら、やる気がなくなるね。だから、先生も他の人に大きな迷惑にならない限り、注意する回数を減らして、見守っているというわけなんだよ。間引きして注意しているんだ」
 最後に「A君、先生の話に大きな間違いはあったかな」などと言っておけば、さらに努力するに違いない。
 Bさんはとてもおとなしい性格だ。たまに遅れて来るとか、授業中についつい私語に興じることもある。Bさんを叱るときは、当然、他の子を叱るような大声も必要ない。
 その性格に合わせて、つり合いをとって注意するのがふつうだ。これを私は「バランス注意」と呼んでいる。
 「みんなの中には、先生に少しくらい叱られても、ちっとも効き目のない子もいるね。反対に、少し叱られただけでも、強いショックをうける人もいるね。これは性格だから、良い悪いはきめられません」
「そこで、先生はその子の性格につり合うように叱ることになる。シーソーと同じだ。おとなしい子にはおとなしめの叱り方を、気の強い子や元気のいい子には、きつめの叱り方で、バランスをとっているんだよ」
 「間引き注意」「バランス注意」は、事前に生徒全員に合意をもらっておくと、無用な誤解も生まれず、結構、威力を発揮する。
(吉田 順:1950年生まれ 34年間横浜市立小・中学校教師 「生徒指導」ネットワーク主宰)


|

« 教師は世間や人生の解説者ではない | トップページ | 明治後期の教師の実態とは »

叱る・ほめる・しつける」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 生徒に合わせて叱り方を変える:

« 教師は世間や人生の解説者ではない | トップページ | 明治後期の教師の実態とは »