子どもたちはメディアと接触する時間が増え、脳が疲れ、多くの子どもがうつ的な状態(慢性疲労)になっている
小児科医から見ますと、子どものうつ病が増えているのではなくて、子どもたちは疲れている、脳が疲れている、それがうつ的な状態をつくっているのですが、精神科医から見れば、現代の多くの子どもたちがうつ病になってしまいます。
うつ病というのは子どもの疲労と非常によく似ています。テレビなどのメディアと接触する時間が増え、夜更かしすれば、どんどん脳の疲労が進み、うつ的な状態になります。小児科医からみれば慢性疲労です。1990年に疲れている子どもは5%しかいなかったのですが、現在は約半数です。肩こりも4人に1人です。テレビやビデオ、ゲームが家庭の中に入ってきたのが1990年頃です。
慢性疲労というのは、脳(こころ)の疲労です。この脳が疲労すると、あらゆる身体的症状が出てくるのが特徴です。まず、笑顔がない、目の輝きがない、目のくま、肩こりです。そのほか重要なサインが「背中が丸い」ということです。
慢性疲労は、脳の疲労、前前頭葉の疲労、心の疲労です。
前前頭葉は、注意力、集中力、記銘力、判断力、笑顔、言語、感性の場であるところなのです。この力が落ちた状態は高齢者の認知障害(痴呆、ぼけ)と同じです。
子どもたちは睡眠時間を削り、土日の休息時間を削り、この慢性疲労を助長していると思います。朝から寝ている子どもも慢性疲労と診断すべきだろうと思うのです。輝きのないうつろな目が特徴です。目というのは脳の一部ですので、脳もこんな状態だろうと考えるのです。
慢性疲労で学校に行けなくなった子どもたちに、1週間、テレビ見ないでね、ゲームをしないでねと指示して、子どもたちがしっかり休むだけで、魔法のように元気になり、笑顔を回復するのです。
慢性疲労は、朝起きない、朝ご飯を食べないという軽い症状から始まります。それが進むと学校へ行っても「だるい、眠い」ということで保健室に行くようになります。この段階で子どもに十分な休養を与えれば、不登校という問題は生まれてこないのです。予防できるのです。
これを私たちは知らないまま、保健室で午前中を過ごすとお昼前には元気になりますので、元気になってよかったねと帰します。帰った子は相変わらず、夜遅くまでいろいろなことをして、また学校に来て、具合が悪くなって、それが繰り返され、慢性疲労が進んで、学校に行けないということが起こってくるのです。
(田澤雄作:1948 年青森県生まれ、小児科の臨床医30年以上、東北大学医学部臨床教授。日本小児科医会「子どもとメデ
ィア」対策委員会副委員長。日本小児科学会「学校保健・心の問題」委員会委員。国立病院機構仙台医療センター 小児科医長)
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