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クラスの子が頑張ったことを「お母さん、ちょっと聞いてください!」と伝えると、驚くほどの効果があった

 クラスの子どもが頑張ったとき、ささいなことでも、保護者に電話でどんどん報告しました。内容は様々です。球技大会で大活躍したこと、学級委員に立候補したことなど、保護者と喜びが共有できそうなことは、迷わず電話していました。
竹内「今日、とてもうれしいことがありました!」
竹内「初めて授業でノートとりました」
竹内「今日は、一度もエスケープしなかったです」
 そんなレベルの低い場合もありましたが、「その子自身が自分でがんばったと思っている」というのが電話するかどうかの判定レベルでした。
保護者「え?、わざわざそんなことで電話してくれたんですか?」と驚かれます。
保護者「また、うちの子が悪いことをしたのかと思いました」と異口同音ですが、我が子が褒められる内容だとわかると、びっくりするくらい喜ばれます。
 担任ですから、クラスの子が頑張ったら、うれしいに決まっています。最初は、その気持ちを伝えたいだけでしたが、やってみると驚くほどの効果なので、頻度がどんどん上がりました。多いときには、一日に十人以上電話したことがあります。
 電話の最後は、
「夜分に本当に失礼しました。あんまりうれしかったので、電話してしまいました」
と言った後「お子さん、しっかりほめてあげてくださいね」と付け加えました。
 ほとんどの場合、翌日、子どもは「おかんが、電話ありがとう言うとったでぇ」とニコニコしながら報告にきます。そういう場合は必ず、「いいお母さんやなぁ。すごく喜んでたで」と伝えます。そう聞いたときの子どもの顔のうれしそうなこと!「この子たちは、なんだかんだ言っても、子どもなんだなぁ」と感じる瞬間です。
 子どもは褒められたら喜びます。「次もがんばろう」と思います。保護者と一緒に喜びが共有できたら、こんなに効果的なことはありません。
 しかし、だからと言って「なんでも褒めればいい」という訳ではありません。自分で頑張ったと思っていないことを褒められた場合、子どもは「こいつは、自分をおだてて、自分の思い通りにしようとしている」と思うだけで、返って関係が悪くなります。大事なことは子どもが自分で頑張ったと思うことをほめることです。
 また、電話では伝えきれない内容の場合は、家に行きました。
 こんなことがある年の六月にありました。反抗期まっただ中で、変形学生服を着ていた聡君という生徒がいました。飛び込みの学年だったこともあって、その子とは、まだうまくいっていませんでした。ある日、その子が、中学三年生になって初めて、宿題のプリントを提出しました。僕は、あんまりうれしかったので、その晩プリントをコピーして、家に持っていって、お母さんに見てもらいました。お母さんは大喜びでした。
 翌日、聡君は「いらんこと、すんなよな!」とすごんできましたが、その日もプリントを提出しました。もちろん、その晩も家に持っていきました。翌朝は、もうすごんできませんでした。結局、竹内は一週間、毎晩、通いました。それ以来、聡君は卒業まで一度も宿題提出を忘れませんでした。竹内との関係も、そのころからよくなっていきました。
 今思うと、あの日、「叱る・叱られる」の関係から「褒める・褒められる」の関係に変わったのかもしれないな、と今は思います。
(
竹内和雄:1965年大阪府生まれ、中学校で20年間教師、大阪府寝屋川市教委指導主事を経て2012年より兵庫県立大学准教授。生徒指導を専門とし、いじめ、不登校等への対応方法を研究。学校心理士。ピア・サポート・コーディネーター)

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