イギリスでは教師に暴力をふるう親が問題になっている
イギリスでは教師に暴力をふるう親が問題になっている。
イギリスでは体罰が1986年に禁止されたが、校内暴力がめだつようになり、1995年には生徒からの暴力で教師が負傷する数が5000件に達した。これは10年前の6倍以上であった。
それがいつか「親が生徒と同じことを始めた」と言われるようになった。親から教師への暴力件数は2005年に216件であったが、その件数は氷山の一角に過ぎないといわれる。暴力を受けたと報告すると、教師としての手腕が疑われると考えたり、学校選択制を採るイギリスでは学校の評判が低下するのを恐れるからだ。
教師が暴力を受けた事件として、つぎのような例がある。母親が小学校に通う子どもの担任に呼び出され、遠足費用の支払いを催促された。帰り際に、数人の教師たちの笑い声が耳に入った。彼女は、てっきりバカにされたと思い込み、戻ってきて、妊娠5カ月だった担任の肩と顔面を殴った。その場に倒れた担任はすぐに病院に運ばれた。幸い母子ともに命に別状はなかったが、社会に大きなショックを与えた。親が教師に暴力を振るって、そのままで済むわけがないと2002年に3カ月の禁固刑の実刑が下された。
また、「教師から叩かれた。学校でいじめられた」などと、子どもが親にうそを言ったことが原因で、親が教師に暴力を振る事件もおきている。
イギリスの暴力事件は2005年には1995年の10倍に増えた。
親の教師に対する暴力は、暴力が蔓延する社会風潮を反映しているのではないか。また、イギリスは階級社会と呼ばれているが、サッチャー元首相の政策もあって、あらゆる分野で競争が激化し所得格差が開いたことがあげられる。「社会で正当に評価されていない」と不満を抱き、怒りをくすぶらせている人も少なくない。
(多賀幹子:広告会社の編集者を経て、フリージャーナリスト。女性・教育・異文化を取り上げる)
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