社会科:ネタを生かした授業づくり
1980年代になると、実用的な日々の実践に直結する方法や指導技術がもてはやされるようになった。
有田和正は、教材づくりを中心とした授業づくりを徹底して研究し、60冊もの本を出版した。これほどまで有田を突き動かした動機は何だったのか。
有田は教師になって4,5年後マンネリを打ち破るため、研究発表会(奈良女子大附属小学校)に出かけ、そのとき自分の授業のまずさに強いシッョクを受けた。
それに、学校現場にはびこる、流行の教育学者や有名教師の影響を受けて、形だけをまね、子どもの成長のない授業に強い不満をもった。
有田は、質の高い授業づくりと、子どもの成長を徹底的に掘り下げていくことを、実践家としての自らの使命と考えたのである。
やがて、有田は、附属小学校に転勤し、月一回の研究授業を行うなかで、教材づくりの重要性や教材研究のおもしろさに気づくようになった。
有田は「子どもが本気になって追究しようとするネタがない授業では、子どもは低いレベルのところで遊ぶことになってしまう。授業づくりで第一に考えるべきことは、何で子どもの気持ちを引きつけ、興味をもたせるかということである。つまり、ネタを何にするかということである」と言う。
子どもたちを「追究の鬼」に育てること、それが有田の授業にかける信念の中心であった。そこで重要になってくるのが、ネタ(子どもたちにとって意外な事実を含む教材のこと)の存在である。
「この教材を出せば、きっとあの子はこんな反応をして、またあの子はこんなことを言い出して・・・」という構想を楽しめるのは教師の特権である。
そのためには、常日ごろから生活のなかに教材化できる素材を見つけるためのアンテナを張っていることが求められる。
(有田和正:1935-2014年、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた)
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