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学びの共同体づくり-静岡県富士市立岳陽中学校

 岳陽中学校の教師たちの活動は分掌と部活と教科の壁で仕切られ、日々、会議と雑務が多忙の中で教師は孤立し、教室の壁は固く閉ざされ、その結果、非行・問題行動は多発し、不登校の生徒は4%の38人に達し、授業中に廊下を徘徊する生徒もいて学力は市内でも最底辺に位置し、地域からの苦情も絶えなかった。
 その岳陽中学校が、3年後に、すべての生徒が教室で学び合う関わりを築き、すべての教師が年間80回の授業研修をとおして同僚性を築き、不登校の生徒を6名に激減させ、学力を市内のトップレベルに向上するとは、私と校長を除いて、生徒も親も教師も誰も信じていなかった。
 その学校改革の中心は日々の授業づくりに求められた。すべての授業で、生徒の「活動(作業)」を取り入れ、数分でもグループによる「協同」の話し合いと、多様な意見を交流する「表現の共有」を、次第に試みられるようになっていった。
 もう一つの学校改革の柱である「同僚性の構築」に向けて、校長は教師全員が1年間に最低1回は授業を公開し、相互に批評し合う研究会を行うことを提起した。「学びの共同体づくり」の授業の力量を高めることが求められたのである。
 校長が腐心したのは、授業検討会の時間の確保である。すべての教師が実施するには年間40回を必要とする。全校研修会で毎回二人ずつ行い、学年の授業研究会ではビデオを活用した。指導案も準備せず、事前の検討会や研修のまとめも行わないことにした。
 授業の検討は、教室の事実に即して「活動(作業)」と「協同(グループ学習)」「「表現の共有」の三つの要素がどのように機能していたかを検討し、どこで生徒の学びが成立し、どこでつまずいたのかを一人ひとりの生徒の姿に即して詳細に検討することが積み重ねられた。一人ひとりの教師の観察した印象や発見を率直に言い合い、すべての教師が対等に意見を出し合う研修が求められた。
 「授業の改革」と「同僚性の構築」に加えて、総合学習の実践を中心に、保護者や市民が教師とともに授業づくりに参加する「学習参加」の実践が学年ごとに少しずつ取り組まれていった。
 変化は緩やかに、しかし劇的に進展した。約半年後、授業の事例研究が30回に達する頃から学校と教室の風景は一変した。
 どの教室でも、教師のテンションが下がり、声のトーンも柔らかくなるにつれ、生徒一人ひとりが柔らかく真摯に学ぶ姿が見られるようになった。授業中に教室を出ていったり廊下を徘徊したりする生徒はいなくなり、机につっぷしている生徒も激減した。教室に知的で健康的な笑いがよみがえった。校内の暴力事件や非行も起こらなくなった。
 教室の学び合いを実現することによって、生徒一人ひとりの尊厳が打ち立てられ、学びによる対話が蘇ったのである。
(
佐藤 学:1951年生まれ、東京大学教授を経て学習院大学教授 学校を訪問(国内外2800)し、学校現場と共に「学びの共同体」の改革を進めている)

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