授業の腕をあげるにはどのようにすればよいか
まず、教室の子どもたちの実態を正確に理解することからすべてが始まる。「全員をわかる、できるようにさせる」ことは、教師の大切な仕事だ。例えば、Aさんはどういう引き算はできて、どういう引き算はできないのか、具体的に例題を示せないのなら漠然ととらえているのである。クラスの中で誰と誰がつまずいていると示せないのなら「実態をつかんでいない」のである。医者が「ああ、どこか痛いのですね」と大ざっぱにとらえているみたいなものである。
もちろん、子どもたちのすべての部分を知ることはできないし、その必要もない。自分の教育にとって大切だと思うことにポイントを絞りこめばいい。ただし「四則計算・読み書き技能の達成度、友人とのかかわりの実態、虫歯治療など健康維持の目安」は必ず含める。
実態をつかむと問題点が見えてくる。しかし、全部を何とかするわけにはいかない。問題点をしぼり込み優先順位をつける。これに公式はない。積極的に解決すべき問題と、チャンスがあればやってみようという問題に整理することが大切なのである。
自分のかかえる問題点をどうしていくのか。身近な信頼できる先輩に教わるのがよい。そういう人に食らいついて教えてもらう。本を多く読むことである。自分が読んでどこかひきつけられる、ためになる本を見つけることだ。人がいいとすすめる本は目を通すことだ。
研究会に参加することをすすめる。いこごちがよいということが大事である。一回や二回で成果はでない。しかし、五年、十年とたつとその差は歴然としてくる。学校で研究活動にとりくみ、研究授業をやっていくことだ。研究授業を避ける人は、技量は伸びようがない。
プロ中のプロが吟味して出来あがった「こういう時は、これが最もよい方法だ」という定石を学ばなくてはならない。しかし、その時々に条件がちがうから、うまくいかないときもある。だから定石は多く知ることが絶対条件となる。「集会に集まった子どもたちを30秒で静かにさせる方法」を一つしか知らないよりも、五つも六つも知っておいた方がいい。その場に応じて使い分けられるようになるには時間がかかる。やはり、それぞれの方法について経験を重ねることが大切だ。
昔から、けいこごとの上達に「守・破・離」と言われてきた。まずは「師の教えるところを守れ」それをしないで我流でやると、必ず伸び悩む。続いて「師の教えに改良を加え、部分的に改革していけ」そして「師から離れ、自分ものものを築きあげよ」ということである。定石を学ぶことは、守にあたるのである。
(向山洋一:1943年生まれ、元東京都公立小学校教師、教育技術法則化運動代表を務めてきた。教師を退職後、TOSSインターネットランドの運営に力を注いでいる)
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