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無理難題な苦情を親から突きつけられ疲弊して退職しないようにするにはどうすればよいか

 保護者からの要望やクレームは、学校側からするとどうしようもないことがあります。
 カウンセリングは受容と共感が基本で「教師はすべて受け入れるべきだ」と間違って伝えられているのではないかと思います。教師と親とは敵対せずパートナーとしてやっといこうとしても、つぶれていく教師が多いのです。
 ある親が校長・教頭を退職、担任を休職にさせた事例があります。「家の子どもがいじめられているから何とかしろ」という要求があり、学校は密着指導をするなど細かな対応はとったのですが、いじめはなくならず解決に至りませんでした。そして親は夜中の二時頃でも平気で教師を呼び出し、親の言うとおりに教師が動いたため、過剰なストレスを溜め、退職や休職にまで至りました。
 教師は何でも受け入れるのではなく、断る時は断り、時間や場所、話をする人を決めるべきです。教師はカウンセリングの基本である受容と共感ばかりを教わったばかりに、何でも話を聞いたりしてしまうという現実があります。このような例は異常事態だと言えます。
 無理難題を要求する親には、子どもとの関係に問題がある親、教師との関係性に問題がある親、攻撃型の親、普段は子どもを放っておきながら問題が起きると突如出てくる親、心の病を追う親に類型化することができます。
 校長のときに二人の親から訴えられたことがありますが、二人とも何らかの精神性疾患だったようです。学校が扱うべき事柄として明確な場合は、学校は真摯に対応しなければなりません。しかし、そうでない親のクレームをまともに受けると教師は疲労こんぱいします。個人でなく組織で対応するシステムが確立されていないのが学校の弱みです。
 無理難題や理不尽な苦情を親から突きつけられて疲弊して退職する教師が多数います。そうならないために、つぎの点をぜひとも守ってください。
(1)
一人で対応しない
 一人で悩まないで、同僚や家族、友人などに苦しさや思いを話しましょう。クレームをエスカレートさせていく危険性があるので学校では管理職に相談し組織で対応してもらいます。教師として力量を問われるのではないかと考える必要はありません。
(2)
面接を制限する3原則を守る
親と会うときは「人・時・場」を制限するようにします。
「人」
 あらかじめ、誰と会うかを決めておきます。それが守れないときは断ります。例えば母親と会うとき、約束した以外の人は別室で待ってもらいます。学年主任や教育相談の教師が同席することを事前に伝えておきます。
「時」
 常識的な時間帯での1時間程度が原則です。自宅への電話は緊急事態以外断ります。夜遅く自宅に電話がかかってきたら「学校で決められていることなので」とやんわりと断りましょう。この制限が破られると、徐々に心理的に追いつめられてしまいます。
「場」
 会う場所を学校内の静かに話し合いができる部屋で面接をします。どうしても自宅近くを望む親の場合は公共施設の利用が適しています。ファミリーレストラン等への呼び出しに応じることは厳禁です。
(3)
記録をしっかりととる
 その場面が目に浮かぶように具体的に記録をします。親が興奮した様子や理不尽さが分かるよう、話した内容・話し方・それに伴う行動等を詳しく記録しておきます。これが、訴訟問題に発展した場合や親の心の問題が疑われるときの判断に貴重な証拠となります。
(
嶋﨑政男:1951年生まれ、東京都公立中学校教師、都立教育研究所学指導主事、東京都公立中学校長等を経て神田外語大学教授。日本学校教育相談学会会長)

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