教師は保護者から訴えがあると、クレーマーと判断しようとしていないか
教師は保護者の訴えをちゃんと聞き、この保護者はクレーマーなのか、どうかの判断ができていないことがあります。教師は気をつけないと、保身のためか保護者をクレーマーにしようとする傾向があります。保護者の訴えに教師は「是々非々」で判断し、保護者の苦情をポジティブに扱い、子どもの指導をどうすべきか考え、行動することが大切です。
ある小学校から私へ相談がありました。内容を聞いて、学校側の対応能力が養われていないと感じました。子どもの間で二、三カ月にわたって「ゲーム機を持ってこい」とか「ソフトをかせ」といった恐喝まがいの事件で、被害者の保護者から学校にいろんな要望が出ました。
当初は「子どもが怖がっているから、学校に行けるようにしてほしい」「謝ってほしい」「再発があったら困る」ということで、学校はそれなりの対応はしたようです。
ところが、ひと段落ついた頃に、賠償問題が出てきました。背景には保護者が要望していたことが、実際には履行されていなかったんだと思います。学校と話し合いの場所を設定せよと要求してきました。事態を収めるために学校側が話し合いの場を設けることになりました。
弁護士として学校から相談を受けるたびに、教師は保護者の要求に「ダメなことには、はっきりとダメと言えばいい」のにと思います。そうすればもっと楽になります。教師は線引きが非常に下手だと思うのです。
この保護者の要求には、教育的指導を実施していくことと、賠償金の支払いの二つがあります。このうち、お金の件は「それは違います」と学校側がはっきり言うべきだが、それが話し合いの場でできなかった。また、その場で加害者の親が土下座しました。土下座で加害者の親が誠意をみせ、一件落着だと学校側は思ったのではないかと思います。しかし加害者の子どもがどう反省したかについて教師は誰も答えられませんでした。
話し合いの場では、どういう話題になったら切りあげるか、そういうシミュレーションが学校側にまったくできていなかったのです。具体的なお金の話になったら、それは学校が扱う本分とは違う、という明確な区分けができることが必要でした。
学校が保護者の訴えの対応に失敗したとき、子どもを思っての行動かということを教師はもう一度よく考えてほしいのです。
「親と正しく勝負しましたか」ということです。その過程を省いたから、状況が悪くなる一方だという気がしてなりません。
(三木憲明:弁護士。いぶき法律事務所、みやこ債権回収株式会社の取締役)
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