学級で気になる子どもへの対応はどうすればよいか
教師の気になる子とは、知的な遅れがない(IQ70以上)にもかかわらず、学習面や行動面で困難を示す(LD,ADHD,高機能自閉症等)子ども、それらの障害の疑いのあるグレーゾーンの子ども、家庭環境に問題を抱える子どもである。文部科学省の調査(小・中学校、2002年)では6.3%で、40人学級では2~3人程度という割合である。
「気になる子」を、他の子どもたちから、ひいきだと言われず、当たり前に受け入れる学級集団づくりをするには、まず「違っていて当たり前」なのだという人間関係に基づいた学級集団をつくることが大前提である。
岸田優代(長野県指導主事)は気になる子への支援は「配慮はするが、特別扱いしない」と決めていた。課題をやるときは、問題を見やすいように拡大したり、問題ごとに一枚ずつプリントした。これは配慮である。周囲の子どもたちが教師の姿勢と支援を見るなかで、一人ひとりの違いを当たり前のことと受けとめる学級集団がつくられていく。対人関係ゲームは集団づくりに効果があった。
教師が保護者の理解を得るには、不安のなかで懸命に育てている保護者の心情に寄り添うことである。保護者がわが子の障害を受け入れていくにはステップ(シック期~受容期)があり、今どの段階でがんばっているかを理解すると、今置かれている保護者の心情が見えてくる。
保護者間の理解は、年度当初の保護者会で、気になる子の保護者から障害名は出さなくてよいが、他の保護者に理解を求められればよい。
曽山和彦は特別支援教育巡回指導員として、多くの気になる子に接してきたが、彼らは、小さな火を「ポッ、ポッ」と出しているように見える。その火はしばらくすると自然に消えることが多いのだが、時には教師や友だちが火を大きくしてしまう。その一例が教師の間髪を入れない注意・叱責などがそれにあたる。教師は一呼吸おいた後、「どうしてなのだろう?」と問いかけをしてみるとよい。子どもの生活を念頭におき「友だちとけんかしたから?」等、心に描いてみるとよい。そうすると、注意する前に「どうしたの?」等の言葉が自然に出てくる。障害児教育の研修をつんだ教師であれば、子どものいいところを探して、認めることができるかが腕の見せどころである。「治そうとするな、かかわろうとせよ」の言葉どおり曽山はできるだけ子どもにかかわろうとした。
気になる子は「わかっちゃいるけどやめられない」という状態にある。そのような子どもに(あなたは)「ちゃんと席に座りなさい」「何でできないの」と、否定的なあなたメッセージで対応し続けた場合、憂慮するのは自尊感情の低下である。しかし、わたしメッセージで対応すれば「わたしはあなたのことを心配しているよ」という教師の率直な思いが伝わり、子どももそのメッセージを受け入れやすい。自尊感情が傷つきやすい気になる子にこそ、教師は「肯定のわたしメッセージ」をたくさん投げかけたい。
(曽山和彦:1961年群馬県生まれ、東京都立。秋田県立養護学校教師、秋田県教育事務所指導主事を経て名城大学教授。学校心理士、カウンセラー、学校におけるカウンセリングをま考える会代表)
(会沢信彦:1965年茨城県生まれ、文教大学教育学部教授。専門は教育心理学。カウンセリング、臨床心理学諸理論に基づいた生徒指導および学級経営を研究)
学級で気になる子どもへの対応はどうすればよいか
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