教師にとって困った保護者と、どのように接していけばよいか
保護者の表現は抱えている背景や事情が複雑なほど、表現は屈折します。それが大人なのです。教師と困った関係になる保護者は理解しにくい保護者です。
保護者をどう理解し、どのような関係をもてばよいか。タイプ別に考えます。
(1)自己主張が強い保護者
強い主張をしてくる保護者です。自分の存在が認められない、分かってもらえないときに自己主張が強くなります。また問題を被害的に受け取ったとき「自分は悪くない」と言いたいわけです。
この場合、相手の土俵に乗り、どちらが正しいか競うことは賢明ではありません。相手の存在や願いを認めていないことになります。
保護者が何を願い、恐れているのかをしっかりと感じとるようにします。願いを明確に受け取って「○○してほしい、というは、・・・・・・になってほしいということですね」という具合です。
願いが実現不可能であっても、願いを満たすために、どのような方法があるのか一緒に考えていく姿勢を保つことが、保護者と向き合っていくために必要ではないでしょうか。
(2)学校や教師を信用しない保護者
学校や教師、人や組織から受けた不幸な体験があると考えられます。信用しないというよりも、信用できない状態にあると言えます。
学校に任せることで起きる保護者の不安、恐れを察知し「・・・・ということが、ご心配なのではないですか?」と、心配に焦点づけしながら丁寧に接するようにします。学校や教師の考えが、こまめに伝わるように心がける必要がある。裏切りへの不安に付きあうには、どこまでも実直に接し、事前に連絡、報告を怠らないようにします。決して裏切られることがないという体験を重ねていくのです。
(3)頑固でものごとに固執する保護者
一つのものごとに執着し、繰り返しそれを問題にする保護者がいます。性格的な頑固さや神経症的な場合などが考えられ、簡単には変化しません。ですが、人は何らかの不安や心配ごとがあればあるほどこの傾向が強くなります。したがって、不安を背景にしている限りは、理をつくして説得しても変化させることはできません。
そのことよりも、保護者の不安を和らげることです。そのために、保護者の頑固さを真面目な性格であると理解し、保護者の味方になるかかわりが求められるのです。余裕をもって、じっくりと時間をかけ耳を傾け「・・・・・が気になってしかたがないんですね。心配ですよね」と述べながら、不安を解いていくようにします。
(4)わが子の非を認めない保護者
大きく三つ考えられます。一つはわが子が家庭で見せている姿と現実にあったことの落差が大きく信じられない場合です。二つ目は、親心から子どもを守ろうとする気持ちが強すぎる場合です。三つ目は、わが子への評価が保護者の評価のように感じて、自分自身を守るために、わが子の非を認めないのです。
二番目も三番目の場合も、保護者に子どもの機嫌を損ねたくない気持ちがあって、親としての自信がありません。
教師は保護者の自信のなさを飲み込みながら、保護者の気持ちを支えます。保護者を責めず、子どもの現実を見ることへの勇気がもてるように、ゆっくりと一緒に歩んでいくようにします。
(小林正幸:1957年群馬県生まれ、筑波大学大学院修士課程教育研究科を修了、東京都立教育研究所相談部主事、東京学芸大学助教授を経て東京学芸大学教授。専門は教育臨床心理学)
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