学級崩壊やいじめとかの源泉は子ども同士や教師と子どものつながりの欠如にある
学級崩壊やいじめとか、あらゆる問題行動の源泉は子ども同士や教師と子どものリレーション(関係、つながり)の欠如にある。それゆえリレーションを回復することが、学校教育を回復することになると私は思っている。
リレーションがあるとは、まず、第一に相手の身、つまり子どもの身になれることです。
教師は子どもとか学級が今どんな心理状態かを考えなければならない。子どもと似たような感情体験のある教師は、子どもの身になりやすい人だと思うんです。教師自身、感度をよくして、普段から体験を豊富にし、足りないところは他の人から耳学問して感情体験を広くすることです。
人の身になれない人っていうのは、自分の価値観に固執する人です。例えば、子どもは教師に口答えすべきでないという価値観があると相手の身になれませんよね。すぐ腹が立って怒りたくなるから。教師は子どもや保護者と接触するときは自分の価値観を一時的に捨てて、手ぶらで相手の世界に入っていかなきゃいかん。教師は価値観を打ち出して飯を食っているわけですけど、人を助けるには、その価値観を捨てた方がよい場合がある。
打ち破ることのできない悩みの壁というものは、自分や人に対して「ねばならない」という思い込みです。私たちの悩みや落ち込みの原因は出来事ではなく、私たちの思い込みです。それがその人を呪縛します。まず「ねばならない」という思い込みを探り出すことです。私のいちばん言いたいことは「思い込み」は「考え方しだいで悩みは消える」ということです。考え方がツボからはずれているから落ち込むのである。つまり人生哲学の検討がたりないということである。今の世の中は頭を使ってツボからはずれないように考えないと幸福にはなれない。
リレーションを作る第二は、子どもに関心をよせ、いいところに気づいてあげること。
その子のことに関心をよせ、気にかけてもらうだけで、子どもはその集団での居心地がよくなる。しゃべるときも顔を見ながらしゃべりますよね。見るというのは、関心を寄せているということの伝え方の一つということになります。
その子どものいいところに気づいてあげること。ところが、子どもに対して劣等感が強い教師というのは、いいところがなかなか見つからずに、すぐけちをつける傾向がある。ですから教師は、子どもに対しては劣等感のない状態でのぞまなければいけない。その結果、気持ちよくほめることができる。
子どもに接していて、ここぞというときには、なりふり構わず体を張ってやらなければいけない。あの先生は僕たちのためを思ってくれる先生だということがわかるから、普段きついことを言ってもそんなに子どもは反逆しないんじゃないかと思うのです。
第三は、自分を打ち出すこと。自分を打ち出すという意味はつぎの二つある。
(1) 自己開示
感情・事実・価値観の三つを開くことを自己開示って言うんです。嬉しい、いやといった感情を語る。私の両親は離婚しているんだという事実を語る。それから「私はこの件について、こうすべきだと思っている」という、自分の価値観とか考えを開くもの。
なぜ、自己開示がそれほど大事なことなのか。一つには自己開示した方がリレーションが深まる。なぜかといったら、この人はこんな人なのかっていうのがわかるから、人に安心して近づける。自己開示すると、それを聞いた側はそこからヒントがもらえて私もこの人と同じやり方でやってみようということになりますよね。相手が自己開示してくれたおかげで私のことをそう思う人もいるってことを知って安心することがある。
(2)自分を主張する
自己主張できない人間は、屈辱感の固まりになる。ここぞと言うときには、教師が自己主張する方が子どもの信頼をかちとることができる。
ある中学校の女の先生で、教師をやめたいと、私のところに相談に来た人がいます。聞くと「私が廊下を雑巾がけの掃除しているとき、子どもが雑巾の汁を私の襟の中に入れ、他の子どもがほうきをはたいてほこりが私の頭にかかった。どう反応したらいいかわからず、知らん顔して掃除した。家に帰ってから怒りがこみ上げてきて、次の週から学校に行くのがいやになってしまった」ということです。
ほんとは、その先生は、自己主張すればよかったんですよ。人間としての尊厳が侵された時には、強烈に言い返さないことには、屈辱感の虜になります。自己主張することによってこちらの精神衛生もよくなるけれども、子どもの方だってそれによって教育的意味が大いにあり得る。それは、いくら生意気な子どもでも心のどこかに先生が畏敬の対象であることをねがう気持ちがあるから。ここぞと言うときにきつい言葉で言い返さないことには、子どもはげんなりする。
(國分康孝:1930年大阪府生まれ、 東京理科大学教授、 筑波大学教授、東京成徳大学副学長などを歴任。日本カウンセリング学会会長、日本産業カウンセラー協会副会長なども歴任し、現在日本教育カウンセラー協会会長。構成的グループエンカウンターを開発した)
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