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親がモンスターになっている場合じゃない、親の学校とのつき合いかたはどのようにすればよいか

  私は教師の質が下がったとはけっして思いません。親と子ども、社会が変わったのです。
 団塊ジュニアの親はバブル期に青春を過ごし、欲しいものを手にいれてきました。家庭は友だち親子で大人と対等な関係です。言いたいことがあれば言うべきだという意識を持っています。そして、いま親の中心世代は長い不況の時代に学生時代を過ごしています。「がんばってもムダ、真面目にやってもむくわれない」という思いがあります。しかし、学校は真面目にがんばることに価値があり成り立つものです。
 いちばん変わったのは子どもたちです。傷つきやすくて図に乗りやすい子が増えたのです。叱られ慣れていないせいで、叱られると自信を失いひどく傷つきます。ほめると調子に乗って手がつけられなくなる。集団行動をさせにくい、集中力のない、教師の言うことを聞かない子どもが増えてきました。
 社会の価値観が変わりました。学校はよいサービスを提供すべきであるというイメージがつくられたのです。世の中全体がクレーム社会となり「不平や不満は言ったほうがいい」という考えがまかり通るようになりました。権利を主張する一方で義務から逃れようとする人が増えています。そんな我がまま、クレーム社会でモンスター・ペアレントが登場したのです。
 そんな時代だからこそ、親と教師の関係も正しく変わる必要があると私は考えます。親が担任をやりこめても意味はありません。担任を支えバックアップすることで、子どもたちは楽しい学校生活が送れるのです。では具体的に親は担任とどう関わればいいのでしょうか。
(1)
親は文句を言うのではなく、お願いする
 不平不満を言うのはただのクレーマだと思われてしまいます。担任にしてほしいことを整理して「お願いします」という姿勢で、まずは連絡帳で相談し、そのあとで直接話します。学級全体のことは、数人の保護者と相談して意見を統一したうえで担任へ。
 新任などの若い担任であれば「私たちに協力できることはありませんか。がんばってください、応援していますよ」という姿勢を見せ、保護者が味方であることを伝えましょう。学級の荒れなど状況に変化がなければ校長にも相談を。副担任を入れるとかの対応をしてもらえることがあります。保護者が教室で見守のもいいでしょう。くれぐれも若い担任を追いつめないことです。うつ病で休職することも多い時代です。保護者の協力で担任を支えてあげましょう。
 ベテランで気になる担任もいます。そのワンマンぶりに圧倒されることがあります。実はいま50代の女性教師の離職が増えています。理由は感覚の古さ。「これまでの指導では、子どもも保護者もついてこない、厳しすぎるというクレームが絶えない」ということで自信を失ってやめてしまうのです。でも、ベテランらしく、わかりやすい授業をしてくれる能力があります。こういう担任はとてもプライドが高いですから、親の姿勢としては「いつも感謝しています。頼っています」と言うのがいいと思います。「先生に叱られるから学校をやめたいなんて言いまして」と悩みを相談します。担任は「一年生には厳しすぎたかな」と気づき、多少は行動を変えるものです。しかし、それは親が甘やかすからだと怒る場合は、校長先生に相談せざるを得ないでしょう。
(2)
担任の先生を飛ばさない
 いきなり校長や教育委員会に訴える親が増えています。それでは「担任を信頼していない」ことになります。
(3)
担任のプライドを傷つけない
 教師は優等生でプライドが高い。そのプライドがあるからこそ、意欲も生まれます。子どもの聞こえるところで担任の悪口を言うのは厳禁です。
(4)
担任への励ましと感謝を伝えて
 親は問題のあるときだけ担任とコミュニケーションをとろうとしますが、実は担任は「満足しています」というメッセージも欲しいのです。連絡帳に書き込んでみてください。きっと、もっといい担任になろうと思ってくれるはずです。
 親と教師は、子どもがよりよく育つために見守っている存在だということを忘れてはいけません。教師といい関係を考えるとき、中心には子どもがいます。何か困ったことがあり、その原因が教師の指導力や人間性にあると感じた場合でも、教師への不平不満はあえてのみ込んで、子どもが困っているという事実を担任に伝えてください。そして、いっしょに対応を考えてくださいとお願いするのです。親と担任がいがみ合っては何も解決しません。
 そして問題が解決したら「ありがとうございます。さすが先生」と、担任に言葉をかけてほしいのです。どんな仕事も、評価されることでがんばれるものです。担任だって感謝されればさらによくなろうと思います。それが人間というものです。子どものためにも、担任とぜひ、よいパートナーシップを築いてください。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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