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教師として求められる大切な資質とはなにか

 私は悩める教師を支える会の代表カウンセラーとして教師にかかわり続けて思うことがあります。それは「教師というのは、いざとなれば、すごい力を発揮する人たち」であるということです。カウンセラーがとても助けられない子どもでも、教師集団が本気になればしばしば救えることがあります。教師という仕事は、多感な子どもたちの人生を変えるほどの大きな影響力を与える仕事なのです。それを引き受けようという使命感と情熱こそ、教師の精神の柱になるべきものです。ダメな教師に共通しているのは、能力以前に使命感が欠如していることです。それを持った人でないと教師という仕事は務まらないでしょう。
 教師という仕事は、子どもたちの魂にくさびを打ち込んでいく仕事です。教師自身も自分の魂に注ぎ込んでいかなくてはなりません。先生方に申し上げたいのは、できれば学期に一度、魂をストレートにぶつけ、子どもたちの心が打ち震えるような授業をやってほしいということです。
 教師は人とかかわる仕事です。人間関係を楽しむことができない人、人間とあまりかかわりたくない人は、教師に向いていないのではないか。人間関係のつくり方がわからない人、共感性が低くて人の気持ちが基本的にわからない人、この場面でこう言えばどう思われるかという文脈が読めない人、自分の言動が人にどう影響を与えるか気づく力が弱い人は、教師に向いていないのではないかと思います。相手がどんな人であっても短時間に信頼関係をパッと築くことができる能力が教師に必要とされるのです。
 教師の資質として、次にあげたいのが「情緒の安定」です。教師や看護婦などは人を援助する仕事ですが、こうした職業についた人は、非常に燃え尽きやすい傾向にあります。どれだけやっても終わりがない。そのため達成感が得られにくいのです。教師は心の揺れ幅が大きくなってしまうと、バーンアウトしやすくなります。気持ちが動かされやすい仕事だからこそ、否定的な経験をしたときの「情緒の安定」の高さ、心の揺れ幅が収まっていることが教師の大切な資質のひとつになるのです。例えば、子どもが教師を罵倒しても冷静で落ち着いていられるということです。冷静でいられると、その状況下で今何をすればいいか、具体的な対処法が見えてきやすいのです。ですから、教師は研修で「親がクレームをつけてきた場面」「いじめを目撃した場面」「子どもから罵声を浴びせられた場面」など、さまざまな場面を想定してロールプレイングを行うことが必要になります。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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