担任と保護者が連携して子どもを共育するためにはどのようにすればよいか
学級崩壊の前兆は、子どもと担任との関係が破たんするばかりでなく、親との関係が瓦解することも大きな要因になります。ケンカをしては担任の負けです。親を良き理解者として味方にするためにはどのようにすればよいでしょうか。私が親になってからわかったことなのですが、親は自分の子どもは冷静にみられずわがままになってしまうということです。ですから、担任は親と同じ目線で子どもを教育するという姿勢が必要です。担任が「教育しているのだ」と上から目線で親と接することは絶対さけなければなりません。かけがえのない子を、担任も一緒になって育てるのだという愛情あふれる姿が親の共感を生むことになるのです。「あの先生はわが子を愛し、思ってくれている」と親が思い、子どもだけでなく、親からも「あの先生なら」と思われるような「親身」になって努力する教師をめざしましょう。
親との連絡が不徹底で関係が悪化することがあります。私は連絡帳には最低限のことを書いて「後ほどお電話いたします」と、極力直接電話で話すようにしています。しかし、担任からの電話を「どうせ文句を言われるのだろう」という関係は望ましくありません。子どもの頑張りを伝えてあげれば、関係が親密になることでしょう。「夜になってもわが子のことを考えている先生がいる」と思って親は感激するはずです。
時には親が興奮して担任の家に電話をかけてくることもあるでしょう。興奮状態のときは、話しの途中で口をはさむと、よけい憤慨するものです。親の心の中にあった怒りを吐き出させてから、担任が冷静に事の全容について説明することです。
学級でトラブルがあった時は、周囲にいた子どもたちからも事実関係を確認し、整理してから親に伝えることが何よりも大切です。子どもは都合のよいことしか話しませんし、事実が歪曲されることもあります。こちらから先に多くを話して、親に言い訳がましくとられるよりも「お子さんはどんなふうに話していましたか」などと向けてみてからでも遅くはありません。
わが子だけはそんなことをするはずがないと親は信じています。親との接し方を間違えると火に油を注ぐことになります。そこで、次のポイントが大切になります。
事態が深刻であるほど直接会って話し合うこと。当事者か複数いる場合は、親のプライドを傷つけないために、個別の話し合いを優先させること。誰が悪いかを決めるのではなく、解決するため建設的な話し合いをすること。今後の対応で確認したことは整理し繰り返すこと。「学校が何をすべきか」の注文だけを聞かず「親もどうすればよいのか」的確にアドバイスできるように準備してから話し合うこと。子どもを深い愛情で教育しているという熱意を伝えること。話し合いの後、親に「先生は期待していたよ」と、子どもに伝えるように頼むこと。最後は笑顔で締めくくること。
(小谷川元一:1959年千葉県生まれ、千葉県松戸市公立小学校教師・指導主事(25年間)、学級崩壊やいじめの解決に全力、2007年退職、東京福祉大学・大学院准教授。子育て・教育支援スペース「こたにがわ学園」理事長。24時間子育て・教育相談事業「いじめ・虐待SOS」を展開)
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