人間は他人の欠点は目につきやすい、問題が起こると他人のせいで自分は関係がないと考えがちだが、自分を映し出す心の鏡はある
自分の身なりを正すためには、鏡の前に立つ。鏡は正直である。ありのままの姿をそこに映し出す。自分のネクタイは曲がっていないと、がんこに言い張る人でも、鏡の前に立てば一目りょうぜんである。だから人は、その誤りを認め、これを直す。
身なりは鏡で正せるとしても、心のゆがみまでも映し出しはしない。だから人はとかく、自分の考えやふるまいの誤りが自覚しにくい。けれど求める心、謙虚な心さえあれば、心の鏡は随所にある。
自分の周囲にある物、いる人、これすべて、わが心の反映である。すべての物がわが心を映し、すべての人が、わが心につながっているのである。もうすこし周囲をよく見たい、もうすこし、周囲の人の声に耳を傾けたい。
自分の言動を自ら反省する人は、自分というものをよく知っている。自分で自分をよく見つめているのである。自分の心を自分の身体から取り出して、外からもう一度自分というものを見直してみる。これができる人には、自分というものが理解できる。
こういう人には、あやまちが非常に少ない。自分の適性は何か、自分の欠点はどうしたところにあるのか、というようなことが、ごく自然に、何ものにもとらわれることなく見出されてくると思うからである。
人間というものは他人の欠点は目につきやすいものだ。なにか問題が起こると、すべて他人のせいで、自分には関係がない、と考えがちである。実際に他人のせいであっても、自分は全く関係がないと言いきれない場合も多々ある。
少なくとも、問題が起こった場合には、他人のせいだと考える前に、まず自分のせいではないか、ということを一度考え直してみることが非常に大切ではないかと思うのである。
(松下幸之助:1894-1989年、パナソニック(旧名:松下電器産業)創業者。経営の神様と呼ばれた日本を代表する経営者)
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