崩壊した学級を仕切り直し・ゲーム・個別学習・相談活動で改善がみられた
学級に必要なルールと人間関係がくずれると、担任の対応に不満をもった子どもたちがうっぷん晴らしに、言い争いや授業妨害、いじめが横行するようになります。どのような対応をすればいいのでしょうか。
崩壊した学級は小学校1年から授業がうまく成立しない状態が3年も続いて、学力も低く、無力感がつのり、陰湿な行動がめだちます。見通しがもてない学級生活の不満を解消するため、刹那的な楽しさを求め、授業中のさわぎの原因もここにあります。
対応として具体的に実施したことは
1 学級状態を仕切り直して、あらたな気持ちでやりはじめる
これまでの学級状態を仕切り直して、新たな気持ちでできることからやり始めることが必要です。そのために、つぎのような再契約法を行う。
(1)子どもたちが無記名で、現在の不満や「これだけはやめよう」「これをいったらおしまいだよ」というような内容を記述する。
(2)担任がそれをまとめて、学級の子どもに読んで聞かせ、黒板に掲示する。
(3)担任に対する不満は、できるかぎり受容し、改めることを約束する。
(4)学級の問題でどれから解決していくかを全員で確認し、一つだけを当面の目標にする。
2 簡単なゲームを取り入れる
学級生活は楽しいところだと感じさせ、不安を取り除きます。そのために1日に一回は楽しいゲームやクイズをすることを約束し、担任が主導で単純なルールで行います。担任の指示がとおるようにするために「命令ゲーム」(命令の最初に「はい」と言ったときだけ指示に従う)などがいいでしょう。簡単で短時間にできるのがよい。
3 学習を保障するために個別学習を行います
学級の子どもたちの学習権を保障するために個別学習を行います。子どもが個々に取り組めるプリントなどの作業学習を多くします。はじめは、プリントを捨てる子、騒いで作業をしない子がいても、とがめず、もくもくと作業を進めることがポイントです。うるさくても学習に取り組むことに慣れさせるための行動療法です。担任が子どもと一対一で個別指導を粘り強く進めていきます。「こんな方法もあるよ」とささやくように声をかけると「自分だけにていねいに教えてくれている」と感じ、安心できるようになります。頑張りを認めながら評価します。子どもが作業に飽きてきたときに、その授業に関係のあるクイズを出します。学級を分割して少人数のクラス編成する方法も効果的です。
4 一人ひとりを援助する相談活動
クラスが荒れていると、子どもたちはみんな傷ついています。静かな安心できる場と受けとめてくれる人を求めています。そのために、一人ひとりへの援助の時間を設けました。
放課後などに時間を設定して、担任と教育相談の教師が一人ひとり相談にのります。はじめは、担任が一対一で、いじめられている子、クラスに居場所がないと感じている子には「今日はどうだった」「一番不安なことは何?」と問いかけ、話しを聞いて「心配してるよ」というメッセージを伝えるようにします。ただ聞いてあげる、つらさをわかってあげるということが大切です。
暴力的な子に対しては、ストレスがたまっていることを理解してあげます。パニックを起こさなかった日は、帰りに「今日は落ち着いていたね。先生安心したよ」と担任のうれしい感情を伝えます。
2か月後、担任に聞くとつぎのような状況になっていました。騒然とした雰囲気はまだありますが、個別に指示を与えると従おうといる子が増えてきました。作業学習を多く取り入れたことで、一人ひとりとコミュニケーションが取れるようになり、落ち着いて取り組む姿が少しずつ見えてきました。暴力的な子は、積極的にかかわったためか、けんかしても私がおさえると、興奮を鎮めるようになってきました。私に悩みをとつとつと打ち明けるようにもなってきました。
(藤村一夫:岩手県公立小学校教師を経て校長。学級経営スーパーバイザー、上級教育カウンセラー、学校心理士。河村茂雄に師事し、学級崩壊・不登校などを予防する学級経営を研究、日本カウンセリング学会学校カウンセリング松原記念賞受賞)
| 固定リンク
「学級崩壊」カテゴリの記事
- 学級崩壊はどのようにして起きるか、その実態と解決に役立つものとは 大塚美和子(2021.07.06)
- 学級崩壊を防ぐには何が大切か?(2021.03.01)
- 学級崩壊を起こす教師、起こさない教師とは(2020.07.16)
- 学級崩壊になったクラスを何回か任されて分かった学級が崩れる要因と、対応の「ツボ」とは(2020.03.27)
- 学級の崩壊の前兆を見逃さず、学級を立て直すには、どうすればよいか(2020.01.11)
コメント