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荒れない学級づくりで、担任に求められる経営力とは何か

 いじめや学級崩壊など、さまざまな学級の問題は学級の独得の空気や人間関係の中で起きている。学級の雰囲気を作っていくのに大事なのは教師のリーダーシップです。  
 こんな学級を作りたいという学級目標を担任と子どもたちが話し合って決めて、それに向かってぐいぐいひっぱっていく力です。この場合、重要なのは、それがどの程度達成できたか確認できる学級目標を作ることです。たとえば学級目標が「みんなの言葉を聞く学級」であれば、「今日どれだけの子がほかの子の話を聞くことができたか」絶えず、子どもたちといっしょに確認し合っていくのです。学級の子ども一人ひとりが「私もこの学級目標の実現のために役立っている」と実感できるようにしていくのです。
 問題行動は子どもの欲求不満解消のひとつの手段です。イライラした子どもがいない学級を作ること。すべての子どもに、学級に居場所あり、学級で必要とされている、という感覚を抱くことのできるのできる学級を作っていくことが重要です。
 担任のリーダーシップのもうひとつは、ルールを守らせ学級の中の秩序を保っておくことです。問題が起きない学級づくりでは、ルールはとても重要な意味をもちます。ルールが守られていれば、弱い子どもでも安心して暮らすことができます。安心できる学級を作るために必要な基本的ルールは
(1)
人を傷つけるようなことは、しない・言わない
 担任は子どもたちのひどい言葉つかいを放置してはいけません。子どもの心に大きな傷を残し、学級に否定的な雰囲気を作ります。担任は「私は、その話し方は好きじゃないな。もう少し違った言い方で言ってみてくれないかな」と、毅然とした、けれど温かい雰囲気で、その都度伝えていきましょう。子どもに改善がみられたら「先生はうれしいな」とその場で言葉がけを行っていくことが重要です。
 言葉づかいをテーマにした授業を行うようにするとよいと思います。お勧めは「ふわふわ言葉、ちくちく言葉」です。人に言われて心が痛んだ言葉、逆に、言ってもらって気持ちが温まる言葉を個々にワークシートに書き、グループや学級で意見を分かち合います。
(2)
学級の子どもたちの発言は、お互いに最後まできちんと聞く
 最も重要なポイントは、このルールを学級がスタートした時点から定着させることです。四月時点で、授業中の「ちっよとしたざわつき」を止めていかないと、ざわざわが途切れないのが当たり前の学級になってしまいます。この「感覚の慣れ」が怖いのです。早ければ6,7月、遅ければ10,11月になって「爆発」します。その結果、自信をなくした担任は「辞めてしまいたい」という気持ちが襲うのです。
 学級づくりで次に大切なのが、学級にふれあいのある関係を作っていくことです。一人ひとりの子どもが、担任に認められていると感じることができる。そして、子ども同士もお互い認め合えていると感じることができる、そんな関係づくりの力が担任には求められます。
 よい学級には「ルールが守られていて、秩序が保たれている」「心と心のふれ合いがある」の二つの特徴があります。
 優れた担任は、一人ひとりの子どもに役割を与え自己存在感を持たせることができます。担任が子どものそばにいるだけで「ほっとする」雰囲気になります。いつも子どもたちとワンパターンのかかわりしかできない担任は無能です。集団場面と個別対応の場面とではモードチェンジをすることが必要です。個別対応では子どもに応じて微妙にチューニングしていくことができる。これが大事です。
 ルールを守らせるのが得意な担任がいます。このタイプの担任はビシッとしたところがあり、ルールに厳しく、子どもたちを抑え込みがちです。活気のない、心のふれ合いのない学級になりがちです。このタイプの担任は20代と50代の担任に多い。なめられてはいけないという気持ちが強いため、つい厳しく指導しすぎてしまう傾向があります。
 もっとも多いのが「なれ合い型」の担任です。子どもがザワついても「まあ、これくらい仕方がないか」と授業を止めて指導することはしません。うまくいっている間はいいのですが、荒れ始めると早い。
 担任には、こうしたいろいろなタイプの方がいます。それぞれの個性を活かしながら、うまくつながり、学年集団にしていくことが重要だと思います。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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