親を学校の活動に巻き込むと、親子で共通の話題ができ親子は変わる
親を学校に巻き込んで、親子で同じ体験をする教育活動をするとよい。子どもが熱中していることに親が関わることに私は大賛成だ。
私は親子同伴の保護者会で、よく読書会を開いた。「ああ無情」(レ・ミゼラブル)という名作を読んで、親子でともに味わってみる読書会だ。世の中を憎むジャン・バルジャンは、19年間の刑期の途中で脱獄するが、教会で神父に助けられ、神父の神のような振る舞いに心を打たれて、不幸な人々を救う人類愛者になっていく。深い愛が感じられる小説である。
これを親子で鑑賞すると、親は子どもに対して母性を振り返り、優しさや思いやりを子どもと一緒に考えるようになった。
学校行事の運動会や芸術祭も、子どもたちだけの舞台では終わらせなかった。親を巻き込んで練習し、準備を重ねていくうちに、親が一緒に手伝ったり、差し入れをしてくれたりするようになる。そうすることで、親子の共通の話題ができて、家庭でも多く語り合うようになったそうだ。
私も遅くまで残って子どもたちや親たちと一緒にラーメンを食べたり、とことん話し合いを続けたりしているうちに、不思議な一体感が生まれた。
親はそこで、自分の子どもだけでなく、ほかの子どもたちとも接して、人生観や社会性を磨いていく。
親が子どもと目的や行動や時間を共有することで、お互いの理解が深くなる。こういう肯定的な波動は、周囲に伝わるものだ。親が子どもの気持ちに寄り添い、一緒に同じ感動を味わうと、その信頼の絆はさらにしっかりと結ばれる。
子どもの存在を無条件に喜べるときや、同じ感動を味わえるときは、子どもは親のその空気を肌で感じて、必ずよい方向へ変わっていくものである。
こうして親子で感動体験を重ねた結果、確かに親も子どももずいぶん変わった。
私がほかの学校に転勤するとき、千人もの保護者の皆さんが、仕事を休んでまでお別れに来てくれたのがとてもうれしかった。
(濤(なみ)川栄太:1943-2009年、20年間の小学校教師を経て、ニッポン放送「テレホン人生相談」回答者、40年間つとめる教育相談では、悩める子どもたちに体当たりで励まし立ち直らせた。元新松下村塾」塾長)
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