退職する教師の約八割がきっかけとなったのが親のクレームや攻撃です
いま、親たちが質的に劣化してきつつある。読売新聞(2007.6.18)の記事に「親の身勝手な要求や問題行動に苦慮している」と多数の教育委員会が回答し、具体的な例では「ウチでは子どもに清掃させていないから、学校でもさせないでほしい」と言う親、子どもが自転車で事故を起こすと「学校の指導が悪い」と主張する親などが紹介されていました。
私がこの問題に直面したのは、学校の教師の悩みを聴くことを通してでした。教師の窮状にショックを受け、教師の支援活動に力を入れるようになりました。教師がうつ病になって休職し「もう教師を続けることができない」と訴えて退職を余儀なくされる教師がいかに多いことか。その八割がきっかけとしてあげるのが保護者からのクレームや教師攻撃です。
もっとも深刻なのは、特定の教師をこれでもかとばかり執拗に攻撃してくる親です。人格そのものを否定され、心をズタズタにされて、まるで人生の敗北者になったかのように学校を去っていく教師も少なからずいます。その内容はあきれるほどひどいものばかりなのです。
例えば、一度、目をつけられたら「これでもか!」とばかりに、集中攻撃をくらいます。30人くらいの親に囲まれ、すごい目つきでにらまれ、「あんたなんか教師失格だ」と何時間も罵声を浴びせられ続けるのです。しまいには「教師を辞める確約書を書け!」とすごんでくるのです。親集団による教師いじめです。「教師に何を言ってもかまわない。教師に人権などない」と親たちは思っているようです。
教師の相談を受けて怒りがこみ上げてきて「こんな親たちは許せない」と拳を震わせたことは一度や二度ではありません。もちろん非常識なひどい親は、ほんの一部ですが、あまりにもひどいので、それによって学校現場は混乱し、教師は大きな心の傷を負わされているのです。
しかし、少し前までごくわずかだったのに、「困った親」は最近はどんどん増殖しているのです。「紫外線は健康に悪い。体育の授業を外でするのは即刻やめてほしい」といった理不尽な要求を次々と突きつけてこられたら、教師の神経もまいってしまいます。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授。専門は臨床心理学、カウンセリング心理学。現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)
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