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子どもを叱るときには何が大事か

 子どもを叱らずに「しつけ」ができれば、こんなに楽なことはない。子どもはしていいことや悪いこと、社会のルールなど何も知らないままで生まれてきます。ですから、子どもの成長の過程でしっかりと教えてあげなければなりません。毅然として、いけないことはいけないと叱ってあげ、導いてあげる必要が出てきます。
 どのように叱ったらいいのか。叱り方には決まったマニュアルはありません。叱る人の個性や価値観に委ねられているのです。しかし、叱り方にはコツがあります。子どもと信頼関係を築くことが大切です。子どもの間違いを正そうとして批判や命令、指示をしても、信頼関係なくしては、子どもの心には届きません。
 子どもとの信頼関係を深めるためには、対話力がとても影響してきます。子どもが「自分の気持ちをわかろうとしてくれる。一生懸命に話を聴いてくれる。味方してくれる」と感じなければ、信頼関係はうまく育っていきません。叱っても、子どもが受け入れるだけの信頼関係がなくては意味がないのです。
 子どもとの信頼関係を築くには、相手を理解し、共感し、援助するカウンセリング・マインドを身につけてほしいと思います。「叱り、教えてあげなければ」とする前に、子どもの心に耳をすませることです。心の声を聞いてあげ、受けとめてあげることです。聴くことで、たまっていた子どもの感情が発散して、子ども心に余裕が生まれ、自分で考えてみようとする準備ができるわけです。日々、子どもの気持ちを汲み取る努力をし、確固たる信頼感を築いていくかが重要なのです。
 もう一つ大切なのが叱るときに「語る力」です。叱るとき、子どもにどのように言って聞かせるべきかが叱り方の一番の極意とも言えます。叱るときに言って聞かせることは、できるだけ理性的に伝えることが鉄則となります。なぜなら、感情的に叱り、子どもがいやな思いになれば、行動を変えてくれる可能性は減ってしまうからです。また、言いすぎて後味の悪さだけが残ってしまうこともあります。
 叱るときに大事なことはつぎのように、簡潔明瞭に事実だけを理性的に伝えることです。
(1)
主語を「私は」にする
 これは叱るとき主語が「私は」になっていることです。叱るとき主語が「あなたは、いつも・・・・・」となっていると、子どもがまた説教されるんだなという思いが強くなり、素直に聞き入れようとはしません。叱るときは、子どもに気持ちを伝えるのですから、主語は「私」であることが必要なのです。
 事実をはっきりと伝え、それがどういう影響があるか、今どんな思いでいるか、具体的に伝えます。何度も私メッセージで語ることにより、叱る意味が子どもに必ず伝わります。
 私メッセージは、子どもに「こうしろ」とは言いません。子どもに判断を任せます。信じて待つことが教育においてはとても大切なことなのです。
(2)
叱る瞬間は毅然とした態度で簡潔に
 
人の生命にかかわるような、子どもが危険な遊びをしていたり、人を傷つけたときなどは、その場できちんと「いけない」と叱って教える必要があります。そんな場合には、その瞬間に悪かったことだけを具体的に言って叱ってください。
(3)
叱らず、暗示をかけ過去形でほめる
 暗示は本当に怖いくらいの効果があります。だとしたら、子どもに「やる気がない」と否定的でマイナスの言葉をかけるより、「最近はやる気になったね」とプラスになる言葉をかけるほうが潜在意識に定着します。
 「やる気をだしなさい」と叱るよりも、「やる気になったね」とほめたほうが効果があるのです。子どもに「なった」と過去形で言って、子どものそれまでのレッテルを張り替えること、これは叱り方の一つのコツです。
 子どもはいつしか「ああ言っているんだから、そうなのかな」と自分で、しらずしらずのうちに自分のイメージをつくっていきます。そのイメージで行動するようになるのです。
(4)
否定から肯定へ
 教師や親は子どもの欠点捜しの名人です。子どものできないこと、悪いところにいつも目を光らせています。そんな言葉をいつも聞かされていると、子どもの心の中は否定語だけで埋めつくされ、どんどん自信をなくしてしまいます。教師や親の子どもへの愛情は伝わりません。子どもは聞こえてきた言葉で判断するしかないからです。
 同じことでも例えば、乱暴→元気、のろま→慎重、臆病で弱虫→繊細でデリケートというように、発想の転換をするだけで、子どもへ届くメッセージはまったく違ってきます。
 落ち着きのない子どもだと思わず、好奇心旺盛で活動的な子どもだと思えばイライラもずっと減り、叱る場面も少なくなるはずです。子どもへの否定的なレッテルをはがして、肯定的なレッテルへとどんどん貼り替えてあげましょう。
 人間は誰しも長所ばかりではありません。長所と短所があって、その人の個性が形づくられています。しかし、教師や親は子どもの長所に目もくれず、短所ばかり探し出してはそれを許さず叱ります。子どものためを思って欠点をなくそうと、しつけをしてしまいがちです。ところが、子どもは否定されれば、気力をなくし無責任になってしまいます。
 子どもだって同じです。短所も一緒に受け入れてあげなければなりません。あるがままの子どもを認めてあげることです。長所も短所も認めて100%そのまま子どもを肯定してあげることが大切なのです。子どもはほっとします。
 子どものいいことを見つけだし伝えてあげることです。子どもが自分の長所を知り、自分が大好きでいられる子どもこそが伸びのびと育つことができます。子どもが認めてもらい、自信をもつと、自分を律することができるようになります。愛情を感じながら、自分の力で自分を育てることができるのです。
 ここまできたらしめたものです。「そんなことしているともったいないんじゃない?」という言葉が生きます。ハッと子どもは気づくことができます。
(
高橋愛子:1938年東京生まれ、高橋愛子家庭教育研究所を設立。カウンセラー)

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