なぜ保護者からの苦情や要求が増え、モンスター化するのか
現代の大人たちは心身共に非常に疲れている。疲れた体と心を引きずりながら、毎日頑張り続けている。けれど頑張っても、満たされない思いが消えない。
満たされない思いにより、精神的な疲労が蓄積する。疲れきった心には「他の人も大変なんだ」という思える余裕など持てない。そして自分だけが不幸であるような気持ちになってくる。
どうして自分だけがという思いで一杯になる。常にイライラして来る。そして、自分以外の人間を羨ましく思い嫉妬する。しだいに怒りに転化していく。口にする言葉の多くが文句になる。
そして、自分と接した相手に対しては要求が増える。誰もが自分よりも楽をしているのだから、「これくらい、やってくれて当然だ」という思いになるからである。常に自分以外の人間に対する怒りが心の中にくすぶっているから、相手が要求に応えないと激しい怒りがわいてくる。そして怒りが爆発するのである。
自分が満たされない、人生がうまくいかないことに対する怒りなのだから、ぶつける相手は誰でもいい。だから、ちょっとしたきっかけで、ぶっつけやすい相手を見つければ、苦情を言い、それがエスカレートするのである。
大人たちの未来への悲観も苦情をより強いものにしている。「このまま頑張り続けても、この先、幸せになれるはずがない」という絶望が、怒りを強めてしまっているのだ。
そして、未来を悲観しているからこそ、「うちの子だけは絶対に人生を失敗させたくない」という思いが強くなる。
だから、教師に対する要求が増える。「うちの子だけは特別扱いしろ」という思いが募る。教師が要求に応えないと、わが子の人生の邪魔をしている、と感じてしまう。
自分だけが不幸だ、という思いと、将来悪いことが怒るという思いに心を支配されているので、被害者意識が強くなってしまうのだ。わけの分からない苦情が発生するのは、この被害者意識によるのである。
これがモンスターの正体である。大人たちの心身の疲労、自分が不幸であるという嘆き、そして未来への悲観、そして被害者意識がモンスターを生みだしているのである。
それと、教師と保護者のコミュニケーションの減少が増加に大きく関係している。
(山脇由貴子: 1969年東京生まれ、東京都の福祉園勤務を経て、都内児童相談所にて児童心理司として19年間勤務。年間200家族以上の相談や治療を行う。全国で講演会や研修の講師)
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