いじめと向き合う実践とは
いじめとは何かをしっかり把握することがまず教師に問われます。いじめは加害者の問題です。いじめは許されない、いじめる側が悪いという毅然とした態度を行きわたらせる必要がある。私は人権問題に関心を持ち、差別をしない・させない・許さないを教育実践の課題として学級経営の要に据え実践を続けてきました。いじめの行為を見て判断するだけではなく、その背景に潜んでいるところまで見つけていきます。
いじめに気づいたら、まず事実を確認します。いじめの指導は
(1)いじめられている子どもの指導
素早く対応します。子どもの気持ちを受け止め、ゆっくり、丁寧に聞く。ひどいいじめにあっているときは教師に対する不信感が大きいので、いじめられている子どもの側に、はっきりと立っていじめを解決すると伝えることが重要です。もう一つ大事なのは保護者との話し合いです。信頼できる関係までお互いの関係をつくっていく必要があります。学級会で話し合いをするときには、子どもや保護者から了解を取ることが必要です。
(2)いじめている子どもの指導
いじめ行為から、その子どもの課題を見つけて向き合います。複数の教師で対応し記録すると良いでしょう。事実が明らかになったら、一緒に考えて解決のためにできることを考えます。保護者にも連絡を取りながら進めていきます。保護者はなかなか事実を認めることができず、教師に批判的にもなりますが、事実を丁寧に伝えます。配慮したいのは、いじめの行為は批判し、本人の良さを大切にして解決への道筋を見つけていけるように話し合うことです。そのなかで新たな子どもの課題が出てくることもあります。
(3)まわりで見ている子どもたちの指導
この子どもたちの心は揺れ動いています。関わりをもちたくない子、気になっているが踏み出せない子、どう解決できるかわからなくて悶々としている子等、思いは複雑です。一歩踏み出すことのできる学級作りを進めていく必要があります。自分で考え、話せるクラスであることが欠かせません。
(4)記録、報告、話し合い
いじめに気がつき、取り組みを始めたら事実を記録します。私情はいれません。記録をもとに、学年会などで解決に向けた話し合いをします。担任一人の責任にしないことが大事です。いじめの取り組みを通して、お互いの人権感覚を高め、いじめを見抜いたり、許さない実践や行動力を身につけることが必要です。そのためには家庭訪問を通して子どもたちの保護者と解決に向けた信頼関係を築く努力をしていくと話し合いが深まります。
そして、子どもたちとの話し合いだけでなく、教材を使って実践を積み重ねるといいでしょう。その場合「いのち」「人権」「人間関係」等がキーワードになります。自尊感情、自己表現、コミュニケーション等、人権の価値を高めていく内容を考えることが必要で、これらを繰り返し学ぶことで問題解決能力を身につけることができます。
また、学習中の子どもたちは参加体験的な手法と子どもの活動を活発にしていきます。自由に発言できる雰囲気が保障されていることが教材を使ってすすめる学習には必要です。
いじめの状況を見ていると、いじめを認識することができない子どもや教師、保護者が増えています。また、いじめが起きるとその背景には必ずと言っていいほど暴力や学級崩壊が存在しています。いじめの解決に大きな役割を果す教師の教材開発や実践などの取り組み、いじめを解決する子どもの自立、あるいは子ども集団や地域の取り組みが求められています。
(安達 昇:1949年京都府生まれ、元小学校教師。早稲田大学教師教育研究員)
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