崩壊しない学級の育て方と回復の仕方はどのようにすればよいか
どんなに学級が揺れようとも崩壊にいたらない条件は「あの先生はあまり面白くないけれど、おれたちのこと好きなんだ、熱心なんだ」と、子どもと先生の心がつながっていることです。
めざす学級をひと言でいうと、指導と援助が統合されていて、子どもたちにルールと人間関係が育っている学級です。教師は、子ども一人ひとりの気持ちや適応に配慮する援助的な側面を中心にかかわり、そのうえでしっかり指導しています。たとえ強くしかっても、揺るがない人間関係で結ばれていれば「自分のためを思ってしかってくれた」と子どもたちは理解するのです。
現代の子どもたちには、援助と指導のバランスは六対四くらいがいいようです。指示するときは、「○○をやりなさい」と命令口調で言うのではなく、やり方を詳しく説明してイメージをもたせます。こうして興味を引き出し、子どもたちがやってみようと思ったところで、さっと実行を促す言葉がけをするようにします。
注意するときも、教師が白黒つけてしかるのではなく、行動の意味を説明して自分から反省を促したり、失敗を次に生かす方法を話し合わせたりします。
子どもたち一人ひとりと人間関係を結ぼうと教師が働きかけます。意識的に全員に毎日声をかけたり、ことあるごとに自己開示したり、一人ひとりの話に耳を傾けたり、帰りにみんなと握手してさよならをしたりします。
つぎは子ども同士の関係をつなげます。これが崩壊するかどうかの分岐点です。まずは座席の隣を利用して二人組を経験させます。二人でできるゲームや教科書の読み合いなど、協同学習を頻繁に取り入れます。さらに活動の単位を四人組の班に広げ子ども同士の関係をつなげます。また全員が活動できるようにいろいろな活動を準備し、そのたびに認め合いを行い、いい子とダメな子に固定するのを防ぎます。
学級のルールは子どもの人間関係が広がるにつれて、みんなと同じようにしようという意識が高まり、徐々に確立していきます。
教師はリーダーシップをとりながらも、子どもとふつうのコミュニケーションがとれると、学級全体に強いつながりが生まれてきます。
学級の様子がおかしいなと感じたら、まず学級経営の方針や対応の仕方を検討し修正してみます。教師が変わると、子どもたちも変わってくるからです。対応を修正するには、まず自分は指導と援助のどちらの側面が強いかを知り、その比率を検討します。そして、話し方、指示の出し方、注意の仕方などを修正します。
子どもは多数に流れます。よいことでも悪いことでも、過半数になるとその集団に同調します。満足している子どもを過半数にできれば、わずかな援助で学級が回復します。
今の子どもたちは、教師が自分の想いや教育方針をわかりやすく伝え、納得させることができなければついてきません。ですから、学級経営も、教師が上から統率するのではなく、子どもといい関係を保ちつつ、子ども同士の人間関係づくりを援助することから始めます。子どもたちの中に入り、中からまとめることが必要です。教師という役割以前に、一人の人間として子どもの前に立つということです。自分の経験にもとづく人生観や想いが教材を通して、自分のもつ土俵で自分らしく子どもとかかわっていくことは、豊かな教育につながるのだと思います。
(河村茂雄:1959年生まれ、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。15年間公立学校教諭を経験した。学級崩壊,学級経営など教育実践に生かせる研究成果を多数提供している)
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