傷つきやすい子どもたちとの人間関係はどのようにしてつくればよいか
カウンセラーにとって、友だちといると疲れる子どもたちが増えていることは常識です。それはとりもなおさず「傷つきやすい子」が増えていることでもあるのです。人と傷つきあわないようにコミュニケーションをしようと思えば疲れますよね。ふれあうということは、傷つくリスクを背負ってこそ成り立つものだからです。
悲しいかな、傷つきやすい子どもたちの心に気づかない親や教師が多い。人間関係で傷つき悩んだときは、人間関係のなかでしか癒されないのです。そのためには人間関係づくりが重要です。
子どもが間違ったことや悪いことをしたら、正しいことを伝える前に、親や教師としてやるべきことは、子どもの気持ちを聴くことではないでしょうか。人は間違ったことをしてしまったとき、みじめな気持ちになり、自己嫌悪に陥ります。そんなとき「注意がたりないからだ」と頭ごなしに言うと、逃げ場がなくなります。人は自分の感情を相手に伝えられないと不満がたまります。グチや悪態を親や教師につきはじめるのは、自分の気持ちを聴いてもらおうと求めているからです。癒されれば、再び人間関係に入っていけるのです。
人と絡み合う経験が、いまの子どもたちには少なくなってきているように思います。お手本とする人間関係が身近に見当たらないのです。「せめぎあって、折り合って、お互いさま」のコミュニケーションを、親や教師は子どもに生活をとおして見せていますか。「ケンカしても仲直りできるんだ」と実証していますか。
そのためには、親や教師自身が一歩踏み込み、生活で実践しはじめることです。人間関係とは変化するものです。その意味でモデルの親や教師が変わらなきゃ、子どもは変われないと思います。子どもたちは、その姿を見てこそ「傷ついても、癒されるまで踏ん張る」子に成長できるのだと思います。
傷つきやすい子だからといって、ふれ合うことに遠慮しないでいただきたいのです。子どもに「傷ついた」といわれたくないからと、当たりさわりのない関係にならないでほしいのです。傷つきやすい子ほど、人とのふれ合いを心の底では望んでいるのです。躊躇することなく、関わりをもってほしいのです。たとえ傷つけたとしても癒すまで付き合う覚悟をしてください。こちらのふところに飛び込んできてもらえるようなコミュニケーションが関係づくりの第一歩です。
構えたコミュニケーションは、防衛的になってしまいます。なついてもらうためには、相手の気持ちを汲み取って「理解と関心を持ってもらえた」という実感を与えることです。謙虚でざっくばらんなコミュニケーションを心がけるようにします。
こちらから子どもに寄り添い、子どもがなつく対話とは、
(1)寛容:間をつくり、子どもが話に割り込みできるようにする
(2)言葉の余韻を大切にする:言葉の意味を聞くというより、その気持ちを聴こうとする
(3)安心感を持たせる:素直になって弱点を子どもに見せ、脇を甘くする
(4)共感的:ほほ笑み、うなずく
(5)関心を寄せる:たえず気づかいをする
(6)気持ちを汲んであげる:事実よりも、子どもの気持ちを汲んであげる
(7)感情をやわらかく見せる
(8)日常の「こぼれ話」をまめにする
(富田富士也:1954年生まれ 若者たちの悩みに取り組む教育心理カウンセラー 「子ども家庭教育フォーラム」代表。千葉明徳短期大学客員教授、日本精神衛生学会理事)
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