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今の教師は授業や生活指導の能力以外に保護者と円滑なコミュニケーションが図れる営業能力が求められている

 今の先生は、単に子どもに勉強や集団生活の送り方を教えればいいわけではない。保護者や地域の方々との良好な関係作りも、これまで以上に進めなければならない。授業や生活指導の能力があり、保護者と円滑にコミュニケーションが図れて、はじめて指導力のある先生とよばれるようになる。
 しかし、先生は、もともと営業的、外向的な性格を主として求められない職業だ。それだけに、交渉ごとに慣れていないから、保護者の対応に失敗し、感情的にさせてしまうことが多い。
 先生は学校にいて授業する時間がほとんどで、外出する機会が少ない仕事なので、保護者から連絡が入っても出向くという発想がない。そのまま電話で処理してしまおうとする。電話は相手の表情が見えないから、保護者の真意をつかみかねる。
 管理職から、クレームを受けた教師に「対面して話をするように」と指示されると、「おっしゃりたいことがあるなら、学校にお越しください」と保護者を呼びつけようとする。
 こちらに非があるかもしれないから、保護者に「学校に来るように」、なんて絶対に言ってはいけない。保護者の家に足を運べば「誠意を見せてくれた」と思ってもらえるかもしれない。なのに、交渉ごとに慣れていないから、余計に保護者を感情的にさせてしまう。
 しかも、学校は少子化にともない、各学年のクラス数が減少している。単学級の学年もあり、一番相談しやすい同学年の教師に相談することが難しくなっている。
 先生になる人は生真面目な人が多い。トラブルが起きたとき、同僚や上司に相談すると迷惑をかけるから、クレームを一人で抱かえ込もうとする。しかし、保護者対応のノウハウを持ち合わせていないため、自爆してしまうことが多い。
 担任の先生は授業があるから保護者対応ばかりにかまけていられない。管理職に相談し、管理職が自ら乗り出した方が、担任があたるよりも、保護者に与えるインパクトが強い。学校は誠意をもって対応していると感じてもらえるかもしれない。
 それに、一人では解決困難な問題でも、複数の教師や経験豊かな管理職であれば、あっさり解決することもある。
 アイディアを持ち寄る意味でも、思い込みで突っ走らずに冷静でいるためにも、厄介な要求や苦情には複数の教師であたるとよい。しかし、人間誰もが、急激な保護者の変化に対応できるわけではない。まだまだ時代が要請する指導力を身に付けきれていない教師が数多くいる。
(
成松 哲:1974年大分県生まれ、ジャーナリスト)

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