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授業で教えたいことを教えないことが、子どもたちの集中力をつくる

 授業は「教えたいこと」を「教えない」のが基本原則だ。本来、子どもたちは自ら知恵出し合い、それを解き明かしていく過程を通して発達をとげていくものだ。教師が授業で、子どもたちに、「教えたいこと」をすぐに教えるようでは、子どもたちを自らの足で山へ登らせないで、ロープウェーで頂上まで連れていってしまうことと同じだ。それでは、子どもたちの足腰が鍛えられない。
 四年の理科で、植物教材を扱っていたとき、雑誌「アエラ」(2000424日号)が届いたので、読んでいると農業の記事が目にとまり「あっ、これは授業で使える」と思った。
 そこで植物学習の最後に、この記事を使って授業をした。もちろん、この記事を印刷したものを、授業の最初に子どもたちに渡して授業したということではない。そんなことをすれば興味が半減してしまう。授業の展開は次のようにした。
教師「この『アエラ』という雑誌の記者が、記事を書こうとして、ある農家を訪れた」
教師「イチゴを育てているビニールハウスの中に案内されて、驚いたことがある。ストーブが置いてあったのだ。なぜだろう?」
子ども「温かくして早くイチゴができるようにするため」
教師「たしかに、そういうこともあるけど、それだけではないんです」
子ども「二酸化炭素を出すため?」
教師「まえに学習したことをよく思いだしたね。植物が栄養をつくり成長するためには、光や水のほかに二酸化炭素が必要だったでしょ。そのために置いてあるということです」
教師「ところがもうひとつ、木の箱が置いてあったのです。その中には何が入っているんだろう?」
 どの子も、その箱というのは、いったいなんだろう? と、わくくわした表情で考えている。知的な興味が集中を生み出す。
子ども「肥料」
子ども「ハチ」
教師「そう。あなたが言ったように、その箱にはミツバチが入っていたのです。どうしてビニールハウスにミツバチが必要なんだろう?」
子ども「ビニールのなかでは風がないから、花粉が飛ばない」
子ども「ハチが密を探しているうちに、からだにおしべの花粉がつき、それがめしべにつくようにするため」
教師「そうです。それで実ができるのです。ただイチゴには蜜はないそうです。ハチはえさにする花粉を求めて動き回っているうちにめしべに花粉がつくということです」
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 子どもたちは一瞬にして、教材の質を嗅ぎとってしまう。現実の農業の姿が見えることは、子どもたちにとってもうれしいことなのだ。イチゴだけでなく、ダイコン、ニンジン、キャベツ、タマネギ、メロン、ウメ、リンゴ、ナシ、モモ、カキ・・・・・・がミツバチによって栽培されていることに子どもたちは驚く。
 雑木林や雑草が生える場所も、年々減少してきている。昆虫のすめない環境が広がってきているのだ。この点についても、今後、子どもたちの目を向けさせていきたい。
 いずれにしても、教えずに、自らよじ登らせるようしてこそ集中力が生まれる。考えさせる授業は集中力を育てる。
(今泉 博:1949年生まれ、東京都公立小学校教師を経て北海道教育大副学長(釧路校担当)。「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行う) 


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