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子どもに反抗され退職を決意したが、やり直して学級がまとまりを持つようになった

 担任が替われば学級が変わり子どもが変わる。担任の姿勢や能力によって学級の雰囲気が変わる。私は新卒当初、五年生の担任をしたが、子どもたちに、ただ知識・理解を教えることだけに性急になっていた。「言うことなんか、きくもんか」と、子どもが反抗すれば「先生に向かって、そんな言い方をしてもよいのか」と説教する。学級が混乱し、疲れ果てて一か月後退職を決意する。そして、恩師を訪ね経過や心情を聞いていただいた。
 私が開口一番「たいへんな学級を担任した。子どもが言うことをきかない。あんなすごい子どもたちは扱えないから退職より道がない」とできごとを語った。恩師は厳しい表情に変わり「君、何を言っているんだ。子どもは生きているんだ。品物のように扱おうとすれば逃げるのは当たり前じゃないか」と、叱られた。私は、大きな誤りをおかしているらしいと気づいて「もう一度、よく考えます」と、その場を引きさがった。
 帰りの車中で「馬に水辺に連れていくことはできるが、水を飲ますことはできない。水を飲むのは馬自身である」という教育の原点に気づき、私自身がこの一か月間、子どもを追いたてて導く表層的、外圧的なかかわりに終始していたことに気づいたのである。
 恩師のひと言から自分をとり戻して、やり直しのスタートを切った。スタートは子どもに過去一か月の私のすべての行動について謝るところから始まった。
 子どもたちへのかかわりは「きちんとしなさい」と叱り、「早くしなさい」と追い立て引っばり、「忘れ物をしてはいけない」と、うるさく注意することに終始していた。指導の基準は、「他の学級と同じように」であり、「五年生ならできるはずだ」という考え方であった。
 目の前の子どもたちの気持ちを考えようとしなかったことに対する謝罪であった。とにかくいっしょに遊んで過去を流そうというわけで、ドッチボールを思いっきり行った。子どもたちは私の気持ちを確かめようとするのか顔面であろうとかまわずに強いボールを投げてくる。私は罪ほろぼしと思って反則を指摘しなかった。
 そのとき、注意すれば「うるせえ!」と言っていたA男が「反則はよそうぜ、かわいそうじゃないか」と言ってくれたのである。「私が彼らの心の中に入っていけば、彼らも私の心の中に入ってきてくれる。まさに子どもは関係的存在であり、情緒的存在である」と実感したのである。
 それからは、教え与える教育のみに性急にならないで、子どもがやる気になるように情緒面へのかかわりを工夫しながら授業や生活指導に全力をつくしたのである。
 子どもに対する私の考え方やかかわり方が変わることによって、子どもの心と私の心が通じ合うようになり、一学期末には学級集団としてのまとまりを持つようになった。
 このような体験から、子どもは関係の中で育つ存在であるし、説教をして理屈で分かったとしても、その通りに動ける存在ではないことを学んだのである。子どもがその気になって自ら活動を始めるには、情意面とのひびき合いによって成立すると言って過言ではない。子どもとかかわっていくにあたっての基本的な考え方は次の通りである。
(1)
責任を分担する
 分からないのは子どもの責任としない。分かるまで教師も、子どもが学べるように、問題解決ができるように、子どもの思考過程に即して発問・助言をしたりして、子どもの活動を援助していく。この過程で教師は「子どもから多くのことを学ぶ」ことができるのである。
(2)
子どもの立場に立って応答する
 子どもの気持ちになって共感的に理解していこうと励み、ふれ合っていくことによって、教師と子どもの関係はいっそう温かく許容的な雰囲気になっていく。そして子どもの自己創造が活発に行われていくのである。子どもを共感的に理解していく姿勢は「子どもに寄り添える、子どもが感じられる教師の内面」を培うことによって高まると考える。
(3)
子どもの態度や感情についての敏感さを持つ
 人間の行動の原動力となるものは問題を解決しようとする意欲や根気などの情緒的要素である。子どものどのような感情の表現であっても、敏感にこれを受けとめ、そのエネルギーと取り組むことが必要である。継続的にふれ合い、子どもの内面に潜行して情緒的なかかわりを持つことが重要である。
(
西 君子:元東京都公立小学校教師、指導主事、校長)

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