本気で叱れば子どもは目覚める、叱り方のポイントとは
石原は元ヤクザだから、子どもたちが怖がって言うことを聞いていると思っている人も多いのではないだろうか。実はそれはまったく当たっていないと言いたい。不良たちは、仲間同士では強がって虚勢を張って生きていても、怖い人からは本能的にすぐに逃げる。元ヤクザだと名乗るのは自滅行為だ。
「今の子どもは、上から目線で話し、一度怒ったら『あのオッサン、ウザい』でおしまい。まずは子どもが座っていたら自分も座って、同じ目線で、とにかく笑って話しかけなきゃダメだよ。話を全部聞いてあげて、いちいちほめて盛り上げてあげなきゃ、ぜったい真面目に大人の話なんか聞いてくれないよ」と、コンビニの前でたむろしていて私に怒られて真面目になった少女が言った。子どもの気持ちは、やはり子どもにしかわからないものだ。
子どもたちに信頼される方法に、マニュアルなどない。いかに真剣な気持ちで子どもたちとつきあうか、彼らの悩みを自分の悩みとして共有してやるか。それをきちんと子どもたちに伝えられるかどうかにかかっている。子どもには個性があるので、一人ひとりの子どもと時間をかけて親身になって話を聞いてやること。叱り方は自分流でいい。だが、子どもに受け入れられるやり方とそうでないやり方があることを知って欲しい。
不良たちは、心を開いて気持ちをぶつけることができる大人に飢えている。本心では大人とたくさん話をしたいと願っている。子どもたちが心を開く相手は「強くて優しい人」や「子どもたちに本物の関心を持って近づいてくる大人」だ。
現代の大人たちは、愛情のこもった叱り方ができていない。愛情に自信がないので叱ることを恐れているようだ。愛情を込めて叱ってやれば、気持ちは子どもたちに必ず伝わる。子どもに対して一番必要なのは愛情だ。愛情があれば全員がまっとうに育つ。叱ることほど、最もわかりやすい愛情表現なのだと言ってもいい。
叱るときに、問題の大小は関係ない。どんなに些細なことでも叱って道理を教えてあげるのが大人の役割である。それこそが子どもへの愛情である。
教師の中には、子どもを叱るときには「見せしめ」のつもりで叱ることが効果的だと考えている人も多いだろう。だが誰でも、みんなの前で叱られたら頭にくるし、プライドが傷つけられる。見せしめでは、子どもたちの心を動かすことはできない。徐々に逆らうようになってくる。
叱り方のポイントは、できるだけ厳しく、毅然とした態度で叱るのがいい。「この人は本当に怒ると怖いのだ」と思われるくらいに、時には大きな声や激しい言葉を使い、堂々と怒りを態度で表現するのがいいだろう。とにかく「ここは厳しく叱る場面だ」と思い切って叱ること。演技でもいいから、本当に取り乱すほどの怒りの表現をしてみること。真剣に怒っている大人は、小柄な女性であっても、迫力があって怖いものだ。
叱り方で重要なことは、上から見下ろして一方的に叱るのではなく、子どもと同じ目線で、真正面から叱ること。顔を近づけて、目線をそらさないこと。さらには一度声を荒げて厳しく叱ったら、サッと切り替えてフォローを始めること。
叱る時間は短い方が効果的だ。くどくなく、何について怒っているのかがはっきりわかるように、単刀直入に叱る。だから、いきなり大きなカミナリを一発落とすのがいいのだ。ふだんの優しいイメージが、ぶっ飛ぶくらいでちょうどいい。
強い大人をしっかりと演じなければ子どもたちは真剣に聞いてくれない。性格的にそれが難しいという人も中にはいるかもしれない。そういう人は、ふだんから、叱り方のリハーサルをしておくことをお勧めする。
私自身、街でこんな子どもに出会ったら、今度はこうやって叱ろうというイメージトレーニングを日常的にやっている。「何かあったらすぐに叱ってやるぞ。そして、その子の人生を救ってやるんだ」という、大げさな気構えでいないと、いざという時にうまく叱れないのも事実だ。
子どもに対する愛情、情熱、気迫をいつも意識して抱いていないと、とっさの行動ができない。子どもを叱るには、ふだんの心構えや経験も大切なのである。
誰かの真似する必要はない。自分流で構わないのだ。そこに愛情がありさえすれば必ずうまくいく。それを信じて、思いっきり子どもを叱って欲しい。
あまり理屈を言うのは意味がない。中途半端にダラダラと長時間、説教をすれば子どもは真剣に聞いてくれないし、間違いなく大人をバカにするようになる。
子どものご機嫌ばかり取っていたりするような大人は軽く扱われる。ずっと優しくしていると子どもたちは気を許したのと勘違いしてナメた態度に出てくることもある。そんな空気を感じたら「コラー!」と、喝をいれなければならない。
真剣に叱らなければ、子どもたちはナメてかかる。ポーズだけで怒っていると思われたら、すぐに子どもにナメられる。なまじっか笑顔を交えて叱ったりすると「なに言ってんだよ」などと軽くみて、反抗してくるのが子どもという生きものである。
そうして、叱った後は、徹底的にフォローして優しくなだめる。このギャップで、こちらの真剣さを子どもたちは理解することになる。大切なのは叱った後のフォローのやり方だ。叱るの一度、フォローはその10倍。フォローがきっちりとできないのであれば、最初から叱らない。これが私の鉄則である。
まずは、叱る原因となった理由について、それがなぜわるいのかという道理をきちんと話してやる。しかし、厳しく叱ったときに子どもに伝わっているはずで、必要以上にだらだらと繰り返す必要はない。一方的にこちらが話すだけではいけない。悪さをした理由や背景になっている悩みを子どもの口から語らせることが問題解決の重要な糸口になる。
固く閉ざされた子どもの心のドアは決して開かない。人には言えない心の傷を負っている。方法はただひとつ、子どもが自分から話す気になるまで、ただただ辛抱強く待つことだ。話を聞き出したかったら、黙って聞き役に徹しているほうが早い。時を待つことが近道であることを私は身をもって体験している。「最近いい顔になったな」と他愛ないことでもほめると、子どもの心はゆっくりと融けてくる。子どもと同じ目線の位置で子どもの話をよく聞く。共に喜び、落ち込み気持ちをひとつにする。子どもが心の中をありったけ吐き出した後でこそ、初めて愛のある説教が生きてくる。
もうひとつは、子どもが行いを改めて成長してくれることを期待するという感情の部分だ。これがフォローの根幹をなす。フォローの表現はありきたりでもいいし、多少大げさでも構わない。「俺は決してお前が憎くて怒っているんじゃないんだぞ。お前がかわいくてしかたがないんだ。お前をいい子に育てたいから、お前が本当はいい子だと知っているからこうやって怒っているんだ」こんな話を、笑顔を作って、時には熱くなって涙をこぼしたりしながら、延々とやるのである。このときに重要なのは、意外と思われるかもしれないが、ある程度の「しつこさ」である。子どもをなだめすかしながら、叱ったあとは優しく、ねちっこく。不思議なことに、このフォローだけはどれだけ長くやっても嫌われることがない。
毅然として鬼のように厳しく叱り、なおかつ叱った後には必ず人間味たっぷりのフォローをしてくれる大人に、子どもは人間の大きさを感じて必ずなついてくる。1分間のカミナリを落としたら、10分間のフォローをするのが、誰にとっても理想的な叱り方なのである。しかし、世の中には、この逆をやって失敗している大人が驚くほど多いのだ。だらだらと叱って、フォローもしないようでは、子どもはグレる一方である。
(石原伸司:1938年千葉県生まれ、12歳で家出し暴力団組長。刑務所に30年服役し引退。作家となり夜回りを始め、「夜回り組長」と呼ばれ非行防止に尽力している)
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