授業でより質の高い発問づくりをするにはどうすればよいか
有田和正氏が「バスの運転手は、運転している時、どこを見て運転しているのですか」と問う、優れた発問があります。子どもたちはあらゆる対象に思考を巡らせます。前方の道路や車、バックやサイドミラー、お客、スピートメーター、次の停留所案内の音声ボタンなど多様な答えが出てきて、それらの役割が明確になります。バスの運転手の安全と通常の運行に対する本質的な役割が理解されるというすばらしい発問です。たった一つの発問で、授業のねらいまで到達できる素晴らしい思考発問と言うことができます。
このような優れた発問は、偶然できるものではありません。周到に準備され、練りに練った研究の中で発せられた発問です。このような発問を我々がするのは決して不可能ではありません。日々の教材研究を重ね、発問が上達すると質が飛躍的に向上していきます。
より高い発問を出す教師と、受け手の子どもとの関係を成立させるために重要なことは、受け手の子どもの反応も重要です。教師の発問に対して、子どもが的確な反応ができることは一朝一夕にできるものではありません。深い教材研究に裏打ちされた鋭い発問がなされても、その発問の意図がわかっていない、答えの発表の仕方や表現方法がわからない訓練されていない子どもたちだと、授業がうまく機能しないことがあります。
若い経験の少ない教師の発問に子どもたちが答えると、教師が答えの分析が瞬時にできず、的確な応答ができない場合があります。子どもたちの意見に対してとっさに対応できる力は、どこまでその教材のことを深く分析しているか、という点にかかっています。聞き返すのはまだ良い方で、中には出た意見をそのまま板書するのに終始したり、聞き流すだけの教師も見られます。教材の字面だけを追う、安易な問答に終始していては授業が深まりません。
経験豊かで優れた教師なら、授業のねらいに触れる発表や意見が出ると的確に反応し、事前に研究していた方向の意見を引き出すようにします。すると、子どもは、さらに教材を深く考えるようになります。
子どもたちが行き詰まっている場合、教材のポイントとなる部分を示唆したり、今までの学習の助言をしたりして、違う角度からさらに追及して意見や考えを求めます。
事前の教材研究で、この方向の意見が出た場合、こう問い質す(問い返し、切り返し)というパターンをしっかり把握していないと、思考させたり、理解させることができず、授業が形だけに流れてしまう結果になります。経験豊かで優れた教師ならば、子どもの代表的な意見はだいたい予測することができ、大きくはずれることはありません。ふだんから一人ひとりの子どもの学習に対する理解が深いからです。経験の少ない教師は発問に対する代表的な意見を予測する練習が必要です。
日々の授業で、この時間で何を理解させるか、そのねらいにつながる発問には、必ず事前に応答の予測を立てておくことが重要です。ねらいのポイントが明確になっていると、とことんまで子どもたちの思考に迫ることができます。
(野口芳宏:1936年生まれ、元小学校校長、大学名誉教授、千葉県教育委員、授業道場野口塾等主宰)
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