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子どものためにならない教師とは

 素晴らしい教師との出会いによって、子どもの前途がバラ色に輝く場合もあるし、子どものためにならない教師との出会いによって、子ども自体がそこなわれる場合もある。
 少なくとも教師である限り、カウンセリングの心は持ってほしい。受容的な態度をもって接する教師でないと子どもたちは心の扉を開こうとはしない。教師と子どもの間に親近感が高まらないと、いかなる教育も子どもの心の中には浸透していかない。
 子どもの心の扉を開かせることができない、子どものためにならない教師のタイプは
(1)
鋳型にはめこむ
 鋳型のように校則にがっちりと子どもをはめ込むことが最上の教育手段と考えている。押し込めることが教育ではない。子どもの中にある善なるもの、無限の可能性を引き出すことが教育である。
(2)
説教がくどい
 子どもが最も嫌うは、クドクド、ネチネチと説教されること。子どもは自分のしたことが悪いと思っていても、反省の念はどこかにいってしまい「うるさい」「またか」と思うだけである。教育効果はマイナスである。愛を感じられない説教は、やめたほうがよい。
(3)
視野が狭い
 勉強ができなくても、教師に反抗しても、なおかつ、その子どもの中にある良いものを引きだしていくのが教師の役目である。子どもの評価は全人的なものでなくてはならない。
 私は非行少年一万人と接していたが、どんなに悪いことをしてきた少年でも、どこか良いところがあった。私を裏切った少年でも、恨んだことはない。愛すべき少年たちである。少年たちは非行をしなければならない原因をもっている。同情すべき、理解してやらなければならない要素をみんなもっている。もっと視野を広くもって子どもをみていただきたいものである。
(4)
高いところから子どもたちを見下ろす
 謙虚さは誰にでも必要であるが、教師にはとくにそれが必要だ。教師は子どもに教える立場にあるからか、意外に人に教えてもらおうという謙虚さがない人がいる。本も読もうともしない教師がいる。だから人間的な成長がないのである。子どもに対しても謙虚であることは、欠くことができない。
(5)
人間的に魅力がない
 教師は、小さく縮こまった人よりも、失敗してもいい、どんな子どもの心の中にもとびこんでいけるような太っ腹の人がいい。模範生タイプの教師には、子どもたちはどうしても近づきがたいのだ。人間的魅力を感じないのだ。そんな教師からは子どもたちは人間性を学ぶことができない。
 教師の中には子どもの目線までおりて、子どもを理解し、子どもの自立性を高め、全人的教育を行っている素晴らしい教師もたくさんいる。子どものためにならない教師は一部である。しかし、このひとにぎりの教師のために、教師全体のイメージダウンとなっている現実は無視するわけにはいかない。
(
相部和男:1928年福岡県生まれ、元少年院法務官、保護観察官)

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