優秀な教師ほど「親の愛・大人の厳しさ・子ども心」の三つ立場を実にバランスよく使い分けている
私が教師になって間もないころに、校長が
「きみは教師であるが親ではない。大人であるが子どもではない。これからどんなふうに子どもに接するつもりかな」と問われ即答できませんでした。
すると、校長は
「『P・A・C』であたりなさい。つまり『P』はペアレント、つまり親の立場で、『A』はアダルト、つまり大人の立場で、『C』はチャイルド、つまり子どもの立場です」
「この三つの立場をバランスよく使い分けてクラスの子どもたちに接するように」と言われました。
言い換えれば、時には親のような、かけがえのない愛情で、またある時は、社会の一員である大人としての厳しさで、さらには、ピエロのように子どもと同化できる子どもの心を忘れずに、ということでしょう。優秀な教師ほどこの三つを実にバランスよく使い分けています。
この「P・A・C」の話が実感として理解できるようになったのは、五、六年後のことです。子どもの心をつかみ、心に響く教育を実践するためには、頑なに自分のスタイルを堅持し、硬直した手法で事に当たってはいけないことを教えてくれたものでした。
どんな場面でも、自分自身のとっている立場を冷静に分析してみることが教師力を磨くことになるでしょう。
(1)P(ペアレント):親の立場で
教師は異質なものを厄介ものと決めつける傾向があります。親の要望に対しても「学級全体のことを考えているのに、わが子のことしか考えてない、なんてわがままな親だ」とあきれたりします。愛情過多の「わが子可愛さ」的な要望には、ある程度寛容にならなければいけない。親になってみて初めて実感したものです。高い関心を持ってくれているのだというようにとらえ方を変え、協力者であると思うことが大切でしょう。
(2)A(アダルト):大人の立場で
すぐキレしてしまう子、ルールなどお構いなしに勝手気ままに行動する子、人の傷つく暴言を平気で吐く子、などが学校現場で横行しています。
ルールを守れない子や人権を傷つけるような行動には、毅然としてシビアに対処したいものです。親に厳しすぎると非難されても、秩序を守れない子には社会の一員としての制裁は当然です。子どもが大人になり恥をかいたり、疎外されることのないように、大人の目線で見つめることです。
学級崩壊は子どもたちの社会性の欠如が最大の要因で起きることを再認識することが大切です。
(3)C(チャイルド):子どもの立場で
子どもが先生を大好きになるスタートラインは教師が子どもの心で触れ合うことから始まります。子どもたちの輪に入り汗だくで走り回ったり、大声で笑ったりする教師の姿は微笑ましいものです。
いつも「お山の大将」を演じていると息切れしてよい結果につながりませんが、タイミングをとらえて道化役を演じプロ魂をみせてほしい。
(4)低学年の子どもには
Pを土台にし、Cを意図的に頻繁に演じてみせる。危険な遊びやけんか、人を傷つける行動にはAも時には必要です。
(5)中学年の子どもには
個々の子どもの特性を理解したうえで、PとAとCをバランスよく使い分けることが必要でしょう。
(6)高学年の子どもには
Aを土台にしながら、状況に応じてPとCを小出しにすることが効果的です。
(小谷川元一:1959年千葉県生まれ、千葉県松戸市公立小学校教師・指導主事(25年間)、学級崩壊やいじめの解決に全力、2007年退職、東京福祉大学・大学院准教授。子育て・教育支援スペース「こたにがわ学園」理事長。24時間子育て・教育相談事業「いじめ・虐待SOS」を展開)
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