子どもを指導するには、その方法よりも教師としての人間のあり方が問われる
学級指導の第一歩は、率先垂範に尽きる。学級指導の原則は「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」(山本五十六)の言葉が示している。これをどの程度実践できるかが教師力のレベルである。
私が勤務する小学校に限って言えば、教師が模範を示すことができるか否かで、子どもに理解されるか否かが決まると言ってよい。
例えば、子どもに「ちゃんと掃除をしなさい」と、言うよりも、教師自身がほうきを使って掃いてみせたりして、見せたりするほうがいい。掃除はどうすればよいのか分からないでいる子どもが意外に多い。まずは手本を示す。
私ならば机の上を雑巾で拭きながら
「気持ちがいいねえ」「目の前がきれいになるのは気分がいいね」「わあ、きれいになった」と、みんなに聞こえるような声で言うこともあれば、つぶやくこともある。あくまで自然さを失わない程度で声を出す。
聞いた子どもは、側に寄ってきて私が掃除した箇所を確かめ「ほんとだ!」と声をあげる。すかさず手に持っている雑巾を見せると、雑巾が手のひらの形で汚れている。これも見せる。
そのうえで、子どもに掃除をやらせてみる。手本を示したうえで「ちゃんとやりなさい」のひと言は効力を発揮する。よいところを、目をこらして見つける。望ましい方向に変化している点を見つけ出すのである。
どうしてもやろうとしない子どもには「一緒にやろう」となかば強引に引き込む。私ならば「やれっ!」と恫喝する。そして、目を皿のようにして美点を探す。
ここで留意することは、できた「こと」ではなく、もっと細かく、できた「点」で観る。例えば、雑巾の「絞り方、持ち方、おさえ方、動かす速さ、洗い方、干し方」などである。雑巾だけでなく、動作時の表情や力の入れ具合、真剣さをほめてもいい。教師の観察力にかかっている。
そして、掃除しているときにほめる。
「○○さん、力のこもった絞り方だね」「○○さん、すばやくなったね」「四角に雑巾を動かせるようになったね」と、見たことをそのまま言葉にすれば、ほめ言葉になる。多くの子どもをほめるために、ほめ言葉は短いほうがよい。短いほうが子どもにも分かりやすく伝わりやすい。
誰でも正当に評価されるとうれしい。努力を認められればうれしい。教師が自分のことを観てくれていると実感することができれば、子どもは喜び、意気揚々とことに当たろうとする。子どもが教師の心を感じることがあれば、子どもは動く。
説得とは言葉で子どもを説き伏せることである。子どもが教師をどう思っているかによって、同じ言葉を言っても全然通じないことがある。例えば、私が「さっ、掃除をしよう!」と言っただけで、子どもがさっさと動くのに、別の教師が同じ言葉で動かそうとしても全く反応しなかったりすることがある。原因は、子どもに「信頼・尊敬・好かれて」いるかの違いである。
指導を成立させるためには、教師自身が子どもに「信頼・尊敬・好かれて」いるか、この三点について評価する必要がある。日々の教育活動の中で謙虚に自分を見つめ、人格向上に努めるべきだ。
指導方法、つまり「やり方」よりも、教師として人間としての「あり方」をこそ私たち教師は追及し、修養を積み重ねるべきなのである。
信頼され、尊敬され、好かれている教師ならば、子どもは説得に応じ、学級崩壊などあり得ない、と私は信じている。
(駒井康弘:青森県公立小学校教師。徹底反復研究会東北支部長)
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