教師はノウハウばかり考えていてはだめだ、もっと大事なことがある
ノウハウばかりを考えている人は、例えば、陸上競技の優れたノウハウが書かれている練習メニューさえ手に入れれば、自分のところも日本一になれると思っているのかもしれない。しかし、そんなことはないのです。
私は大阪市立松虫中学校で部活動を指導し、陸上競技では7年間で、全国大会、国体等出場総数80種目、うち入賞総数53種目、13回の日本一を達成しました。
これまで全国から多くの陸上競技指導者の方たちが、松虫中学校の陸上部の練習を見学にきてくださいました。見学にこられた主旨は、この強さの秘訣をぜひ知りたいということです。
私はすべてオープンに見ていただきました。そして、一年分の練習メニューも、望まれればすべて差しあげてきました。
一年後にさまざまな報告をいただきます。すると、同じメニューを参考にして練習しているのに、成果に差がでる。
この違いは、いったいどこにあるのだろう。教師の人間力によって違いが出てくる。私はそうとしか思えないのです。この差は、様々な要因があるにしても、最も大きいのは、どう考えても、教師自身の「人間力」です。常に自分を高めようとしているのかどうかにかかってくるとしか思えないのです。
結局は、教師自身がいかに向上していくかという姿勢にかかってくる。そう思います。教師自身が、常に自分を高め、少しでも成長していこうと努力する。その姿勢を子どもに示していないかぎり、子どもたちの成長もないし、学校も変わらないのです。
「子どものため」という責任感こそが、教師を教師たらしめるのだと思います。子どもを少しでも成長させたいという責任感があるからこそ、自分も成長していくために努力し、学びつづけようとしているのです。
子どもたちは、そういう教師自身のひたむきな姿に共鳴していくのです。
ノウハウがあっても、教師に人間としての魅力がないと生徒が成長しようと心のコップを上に向けないのです。人間力のある先生には「オーラ」があります。そのオーラとは、強固な教育理念、自らを物事の中心として考える主体性、率先垂範、しんどいことを他人に振らず自らの手を汚して指導する、身のまわりのすさみの除去、といったオーラを持っています。
自分に気づいた人だけが「相手のことを気づける」し「自分を変えて相手を変える」ことができるのです。生徒にもいろいろな成育歴や複雑な家庭環境があり、表面的な事象にとらわれず、その裏にある心と生活を見てこそ生徒の本当の気持ちがわかるのです。
教師が変われば生徒も変わる。主体変容が最も大切なことです。
(原田隆史:1960年大阪府生まれ、大阪市立中学校教師(20年間)、教師塾主宰を経て原田教育研究所社長、埼玉県教育委員。大阪市立松虫中学校を態度教育・価値観教育・自立型人間育成教育により建て直し、陸上競技では7年間で13回の日本一を達成した)
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