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けんかでケガをさせたのに、加害者の親が被害者の親に謝らないとき、どう対応すればよいか

 子どもがけんかでケガしたときに、学級ごとに対応がばらばらなことがある。不公平な対応と親が感じれば問題が大きくなってしまう。トラブルがあった場合、対応マニュアルをつくっておき、教師相互の共通理解を図っておくとよい。
 学校であった事件は、その日のうちに担任は管理職と一緒にケガをさせられた子どもの家にお見舞いに行くことが必要だ。指導が行き届かなかったことを丁寧に詫びれば、親に学校の誠意が伝わるはずだ。この初期の対応が遅れると「なぜ、ケガをさせた子どもの親が謝りにこないのだ!」と、問題が広がっていく。
 ケガをした子どもの、傷ついたという事実にきちんと目を向け「辛かったね」などと優しく声かけしてあげよう。子ども自身が教師や友だちから大切に扱われていることを実感できれば、教室でのトラブルも減り、親の信頼感も高まるだろう。
 けんかでわが子をケガさせられてうれしい親はいない。傷つけられたことに怒るのは当然といえる。「お怒りはもっともです」と親の心情に訴えながら、まず、親を落ち着かせてから話し合うようにする。「これからどうしましょうか」と、親が自ら今後の処理について言い出すように話を進めていく。
 子ども同士の関係修復を第一に考えたい。子ども同士の関係修復を第一に考えるという方針が円滑にすすめば、親の騒ぎはしぜんに収束に向かうことになるでしょう。そのために、たとえ不満があっても相手を傷つけてしまったことに対してだけば謝らせ、一応のケジメをつけさせる必要がある。
 ケガをさせた方の親に事件の内容、子どもへの指導、被害者の親に対する学校の対応を説明する。ケガをさせられた相手の親に謝るよううながしても、電話も謝りもしないときがある。
 よくあることだが、学校での出来事と子どもが家に帰ってから親に話すことが食い違っていることがある。また、本当の被害者は暴力をふるった子どもであることも多い。
 謝らないのは、きっとその親にはなにか納得できない理由がある。担任の指導や対処の仕方、けがをさせた子どもとの過去のかかわり、これまでわが子の扱いへの不満など、納得できないことがあって、謝れないのかもしれない。
 まずは、なぜ謝りたくないのか、素直に理由を聞いて、それを確かめる。事実の認識に食い違いがあれば、その親の視点も取り入れて事実の再調査をする。食い違いがあれば、それをただすだけで、ある程度問題は解決する。
 学校での事件でも、傷害事件は親にも責任があり、治療代など負担することが原則であることを説明する。対応を誤り、被害者が警察に届けたり、民事裁判になって莫大な費用と時間がかかったりした事例を紹介する。また、事件になると、子どもを傷つけることにもなる。電話や文書、訪問による謝罪や弁償が大切であることを説明する。教師も謝罪に同行してもよいと提案する。
 校内で起きたことは学校に管理責任がある。両方の親へ監督不行き届きの点を詫びることで、担任もケジメをつけなければならない。暴力を誘発するような周りの子どもたちの言動など、問題があれば、それに対する指導の方針も親に知らせながら取り組んでいく。担任の姿勢に納得すれば、加害者の親もけがをさせたことに対して被害者に謝るだろう。
 子どもが事件をおこしたとき、親が謝罪する姿をわが子にみせれば、子どもは事件の重大さに気づき、子どもなりに「すまない、もう二度としない」と心に誓うようになる。家族のきずなが、わが子が再び過ちを起こさないための最大の抑止力になる。
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家本芳郎:19302006年、東京都生まれ。神奈川の小・中学校で約30年、教師生活を送る。退職後、研究、評論、著述、講演活動に入る。長年、全国生活指導研究協議会、日本生活指導研究所の活動に参加。全国教育文化研究所、日本群読教育の会を主宰した)

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