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保護者対応の鉄則とは何か

 保護者の意識はこれまでと明らかに違ってきています。教師はサービスの提供者で満足がいかなければ、クレームをつけるのは当然というわけです。保護者が理解者・協力者になってもらうには、信頼感を獲得するしかないと思います。
 
「しっかりとした実践をしていれば、保護者はわかってくれ、協力してくれる」と期待するだけではダメで、「適切に保護者に伝える」「保護者のニーズを実践に生かす」という対応が求められます。それも「先手の対応をしていく」ことが大事です。
 現代の教師は「保護者の信頼を勝ちとりながら実践をしていく立場になった」という認識が必要でしょう。
 教師と保護者が良好な人間関係をつくるためには、まず教師から保護者に「教育実践を伝える」、「保護者のニーズをつかむ」ことです。
 「教育実践に自分はどのように取り組むのか」を具体的に表明します。このとき、教師自身がどういう人間なのか、出身地、専門、家族、趣味、特技など保護者が教師を身近に感じられるような情報を伝えます。「先生は○○というタイプの人だから、あのような教育方針を持っているのか」と理解しやすいからです。
 日常の教育実践の様子や子どもたちの学級生活の様子は、定期的に伝えます。授業や休み時間の様子、給食のトピックスなど保護者は知りたいものです。
 学期や学年の終わりに、学習の成果などを数値化してグラフで示すと保護者は理解しやすいと思います。私が開発したQ-Uテストを用いると、子どもの学習意欲や友人関係などが数値化され全国平均とも比較できるため、妥当性のある目安となります。
 情報は全員の保護者に均等になされることが大事です。保護者会で説明するとともに、学級通信でも伝えることが肝要です。保護者が教師の方針、学級の様子、友だち関係などを知らないと、学級内の小さな出来事に対しても、教師への強い批判がでるおそれがあります。
 保護者は「自分の子どもが教師に常に気に留めてもらっている」ということで安心するものです。それが教師に対する信頼にもつながっていきます。連絡帳による欠席連絡は、今日一日の学級の出来事を家庭に伝えることで保護者は安心します。教師は気になっている、心配している、ということをそのままにしてはいけません。教師は電話で保護者にまめに伝えることが求められます。その際、最近の出来事、学級や子どもの様子を知らせたり、家庭での様子を聞いたりしてコミュニケーションをはかり、理解を深めていくことが大事です。
 教育実践や学級経営をより充実させるためには、子どもたちの実態やニーズ、保護者のニーズを的確に把握する必要があります。マッチしていなければ、かみ合わず、子どもにも保護者にも評価されません。
 学級通信で保護者からの感想や意見を呼びかける。保護者の参観する行事などでアンケートを取る。それらの結果を整理して、保護者の主要な要望を開示する。要望に対する対応、教師の考えを全体に伝える。要望を取り入れた実践の成果を学期ごとに全体に伝えるようにします。
 保護者会はいろいろな相手と情報交換ができるよう設定しておくとよい。事前に話し合いたいテーマを学級通信などで打ち合わせ、保護者の関心を高めておくのもよいでしょう。実際の話し合いでは、四人くらいに分かれて、フリートーキングで話してもらうと、会話も弾みやすくなります。その後、各グループで出た話題を全体に短く発表してもらい、その中のポイントを全体で話し合うのもよいでしょう。
 地域の保護者の人間関係が希薄化してきたので、教師は保護者の人間関係づくりをリードしていくことが求められます。保護者同士の人間関係が深まれば、学級のことに関心を持ってもらえますし、問題が起きたとき、話し合って解決していこうという雰囲気が生まれやすくなります。
 保護者が教師にクレームを言ってくる場合、不信感が伴い、感情が高ぶっていることが多い。ここで最も重要なのは、教師も感情的に対応してしまうといった事態にならないようにすることです。ポイントは教師の正当性をとにかく伝えようとすることではなく、保護者の不信感を払しょくし、子どものために「教師と保護者が協同して対応していく」ことを確認するために、話し合うことを意識して進めることです。その際、第三者の立場の人が話し合いの場をリードしてくれるとよい。
 まず怒りを静めなければ建設的な話し合いはすすめられません。そこで、保護者に言い分を十分に話してもらいます。途中で反論しないで一通り話してもらいます。その話を整理して「~のように受け取ったならば、不信感をもたれる気持ちはわかります」と保護者の怒りの感情を受け止めます。
 そうして、今度は教師が行ってきた対応を時間を追って説明していきます。弁明くさくなるのは禁物です。ポイントは解釈したこと、考えたこと、行動したことを識別して分析的に説明します。
 教師の説明を聞いても納得できない保護者も多い。どちらが正しいか白黒つけようという姿勢ではダメです。今後の協力が得られなくなってしまいます。
 そこで、教師は保護者に「どのような対応を期待していたのか」を質問します。教師が受け入れられない部分があれば、否定するではなく「他の子どもたちの○○という反発が予想されますが、どう対応すればよいのでしょうか」と謙虚に質問します。異なる考えを持つ子どもや保護者がいることを気づいてもらうようにします。
 保護者との意見の食い違いがあった場合は、今後、教師と保護者が連携して子どものためによりよい対応していくために何をすればよいか、という視点で話し合うことが求められます。
 教師と保護者が連携して対応する内容を確認していきます。経過報告は二週間おきぐらいが妥当でしょう。その後は問題が改善されるまで対応を続けていきます。きちんとした丁寧な対応をすることで、保護者の信頼を回復するという目的もあることを忘れてはなりません。
(
河村茂雄:1959年生まれ、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。15年間公立学校教諭を経験した。学級崩壊,学級経営など教育実践に生かせる研究成果を多数提供している)

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