教師の指導タイプによって、対応するのに苦慮する苦手な保護者がいる
教師の指導タイプによって、対応に苦慮する苦手な保護者に一定の傾向があります。
教師には、それぞれの教師特有の対人関係のとり方、学級経営の進め方、子どもへの対応の仕方があります。一方、それぞれの保護者には、子どもの育て方、学校に期待する内容、教師に望む対応があります。このような中で教師と保護者との人間関係の間で、相互に理解できないこと、誤解が生じてしまうことが多いのだと思います。
教師は事前にそうしたこと、さらには自分のやり方で理解が得られにくい保護者のタイプを押さえておけば、先手の対応をすることができ、保護者との対応で悩むことが少なくなると考えられます。
そこで次の代表的な教師のタイプについて考えてみます。
(1)きびきびと一斉指導を展開する教師
子どもたちにやるべきことを明確にして、子どもたち全員にけじめを持って学校生活を送ることを、自ら先頭に立って求めていくタイプの教師です。
物事を明確にテキパキと進め、指導性の強い教師です。そのため、努力が足りないと感じられる子ども、生活態度や活動がルーズな子ども、みんなと同じ行動することが苦手な子どもには厳しい教師と受け取られ面もあります。
このような教師にとって苦慮してしまう傾向のある保護者は、「被害者意識が強い」「子どもの非を絶対認めない」「大人になりきれていない」保護者があると思います。
このタイプの教師は、家庭に対して、学級通信などを通して、行事の活動予定、子どもたちの様子などを知らせるなど、全体に対してきちんとした対応をしていると思います。
保護者が無関心なのは、どのような対応を教師がしようとも、関心を持つ意識が低いためでしょう。ネガティブにとらえてしまう保護者には特に注意が必要です。教師の進め方についていけない、教育の価値観が教師と違うという側面が大きいからです。
しかし、このタイプの教師には、そのことがわからないことが多いのです。きちんと取り組んでいるのだから、保護者もわかってくれているはずだと信じているからです。したがって、クレームを言われたりすると、目の前の問題について論理的に話し合おうとして、保護者との間に感情の行き違いが生じる可能性があります。
このような場合、保護者がひっかかっているのは、今のような対応では、わが子の個性が認められなくて寂しいという感情的なもの、教育に関する価値観の問題があります。
こうした場合、保護者が求めているのは、問題に対する的確な答えではなく、自分やわが子の気持ち、個性を受け入れてほしい、ということです。
そこで、目の前の問題についてだけでなく、子どもの教育という大きな観点で、個人面談などの機会を利用して教師と保護者がゆっくり話し合う場を設けることで、互いの思いが少しでもわかり合えていくと思います。
最近は、いろいろな考えを持つ保護者がいます。そうした保護者のニーズと自分の教育観との折り合いをつけ、実践に取り組んでいくことが求められます。
(2)温和で穏やかな個別的な対応を得意とする教師
大きな声で叱ったりすることが少なく、一人ひとりに諭すように話すタイプの教師です。ただ、気をつかいすぎる、繊細な面を持っています。子どもたちに、母性を中心に接するような援助性が強く、強く指導する面が少ない傾向があります。
このような教師にとって苦慮してしまう傾向のある保護者は、「教師を見下すような」「感情的に苦情を言ってくる」保護者があると思います。
このタイプの教師の場合、頻繁にクレームを受けたり、個人的な要求を求められたりすることが多い。また、話し合いでも、保護者の言い分を聞くことが多く、問題解決につながる提案や、譲れない部分について、相手に強く主張することが少ないので、保護者は自分の言い分をすべて教師が受け入れてくれたと思いがちになります。
穏やかだけれども、キビキビした指導や子どもの取り組みの成果を指摘することの少ないこうした教師にもの足りなさを感じてしまうと思います。
こうした保護者は、目標とそれに対する成果について言及がないと、教師はあいまいにして手を抜いていると誤解してしまうからです。また、意欲的でないととらえられてしまうこともあるでしょう。
受け入れない保護者の個人的な要求に対しては「何々は、こう対応するが、何々はできません」と具体的に対応策を説明することが必要になってくると思います。
一方で、全体に対してデータを用いた子どもの取り組みの成果を、定期的に説明する取組も必要でしょう。例えば、保護者会で、子どもたちの生活面のことを感情豊かに話すだけでなく、子どもたちの学力の状態などについて、県や国の平均値と比較しながら説明する、マイナス面にはどう対応していきたいとしっかり説明する。このことで保護者の理解を得ることができてくると思います。
(河村茂雄:1959年生まれ、早稲田大学教育学部教授。15年間公立学校教諭を経験した。学級崩壊,学級経営など教育実践に生かせる研究成果を多数提供している)
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