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教師が身につけなければならない力とは何か

 教師の熱情・真剣さは、子どもに対する愛情の現われであり、教職に対する使命感の現われでもあるでしょう。その具体的な姿が、面倒見の良さ、厳しい中にも温かい配慮、分かりやすい・楽しい授業、印象深い教材作成、きめ細かな指導となります。
 実際に子どもを指導していくために、具体的な能力や技能が不可欠です。「教師は授業で勝負する」と言われてきたように、授業こそ教師が自分を賭ける場であり、授業を見れば、その教師の教育者としての力量も見当がつくのです。だから、授業の技術的・手法的側面に広い関心が集まっています。
 発問や教材提示のあり方、説明や解説のポイント、自主的な活動の支え方、学習過程の診断とフィードバックにしても工夫すべき課題が多い。さらには、板書・机間巡視の仕方、ワークシート・テスト問題の作り方など、教師として心得ておくべき技術も数多くあります。
 教師はこうした技術や手法をきちんと身につける必要があります。しかし、同時に技術や手法がいくら立派でも、それだけで良い授業ができるわけではありません。良い授業は単純に還元できぬものなのです。
 例えば、人間的な迫力なり存在感があるかどうか、という問題があります。ぼそぼそと語りかけるのでは、子どもの心には届きません。子どもの心をきちんとつかんでいるか、という問題も重要です。子どもに信頼され、子どもの心をきちんとつかんだうえで初めて、授業の技術や手法が効果を持つのです。
 こうしたことを考えると、教師の人間としての生き方やあり方まで問われのではないか、と思われてきます。教師は子どもとの関わりを通じて、自分の人間としてのあり方の全てを、さらけ出してしまっているのです。この意味で、教師に本当に必要とされるのは、授業の技術や手法ではなく、総合的な人間力なのです。
 確かな授業を考えるとき、配慮すべきことをあげると、主要な単元目標をどのような順序で何をやっていけば、その目標に到達できるのか、という見通しをはっきりさせる。学習で想定されるつまずきについて洞察を深める。教師のねらいに向かって子どもが自発的に活動を展開できるように準備する。子どもが問題意識を持ち考え抜く学習ができるよう、子どもの体験や視点などが学習に反映されるよう配慮する。授業の中で学習の状況を見て取り、その後の指導展開に生かす。毎時間の終わりに簡単な自己評価の場をもうける。といったことが考えられます。
教師が努力すべき主要なポイントは、
(1)
対人関係能力を高める
 教師は子どもとの間に信頼関係を築ける力を持つこと。
 子どもの内面の気持ちや感情を敏感に感受できる。子どもと一緒に遊んだり、談笑できることを喜びとする。子どもと心のつながりを深める方法を身につけている。子どもに軽視されたり無視されたりしない存在感を持つ。
(2)
人間的、社会的に成熟する
 開かれた柔軟な人柄である。自分を受け入れ心理的に安定し自信を持っている。人間的な暖かさと協調性がある。社会的な常識と責任感を持つ。
(3)
子ども集団を指導する力と一人ひとりを生かす力を合わせ持つこと
 子ども集団に対する指示が的確で規律正しく活動させることができる力がある。集団に熱気と活気を与え、みんなの気持ちを一つの方向に集中させる力を持つ。集団の全体的動きと同時に一人ひとりの状況を把握できる力がある。公平で、えこひきがなく、一部の勢いの強い子どもに引きずられない力を持つ。
(4)
教科指導の専門家として成長する
 教材の内容や背景、筋道のポイントについ理解を深める。多様な指導方法や活動・展開について理解と技能を持つ。学習過程でのつまずきとその対応について深い理解を持つ。学習状況を把握するため評価技法を活用できる力を持つ。黒板やその他広範な教授メディアを活用できる技能を持つ。
(5)
常に学び続け成長する
 自分自身に対して謙虚な気持ちを持ち、常に学び続けようとする姿勢を持つ。精神的な深さに対する感覚を持ち、求道的に生きていく姿勢を持つ。
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梶田叡一:1941年島根県生まれ、国立教育研究所研究員、京都大学教授、兵庫教育大学学長等を歴任して奈良学園大学長。中央教育審議会副会長、教育課程部会部会長。人間教育研究協議会代表。教育心理学者)

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