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力のない担任が荒れた学級を立て直すにはどのようにすればよいか

 私は郵便局勤めのあと30歳で福島県公立小学校教師になった。二校目に持った高学年のクラスが荒れ騒然とした。専科の授業は静かなのに、私の授業は成立せず、子どもたちにふりまわされた。屈辱で食事がノドを通らなくなりやせ、教室に行くのがこわくなった。みじめで力の無さがつくづくいやになった。子ども集団を統率するすべを知らなかったし、ボスとしてふるまえるだけの気迫もなかった。
 子どもたちが静かにならないときは、どなって静かにさせてはいけないと考えていた。力のない教師がどならないで静かにさせる方法などない。子ども集団を相手にするということは、血みどろの闘いなのである。格闘戦であり、自分の全能力をつぎ込むバトルなのだ。
 今ならびしっと「今は先生が話す時間です。話を聞きなさい」それで話が止まらなければ「○○くん、うるさいです。話をやめて聞きなさい」これで、おおかたは静かになる。教師の話を聞かずに質問してきたら、今なら「聞いていないあなたが悪いのです。説明は一度しかしません」と突っぱねるところだが当時はできなかった。
 クラスをボロボロにしたのは私である。力がないならないなりに全力を尽くし、精いっぱいやればいいのだと思うようにした。そこで、研究サークルに参加した。私に授業の技術・知識を教えてくれた。追試をし、授業記録をとり、論文を書きサークルへ提案した。サークル仲間との連帯感や熱気ももらった。私のクラスの専科の力のある教師からアドバイスをいただき、自分の弱点がわかり、解決への道筋を示してもらった。同僚の激励に勇気と希望を与えてもらい感謝の気持ちでいっぱいになった。人は一人では耐えられなくても、味方がいれば強くなれる。私は倒れずにすんだ。
 「何としても自分が荒らしてしまったこのクラスを立て直してみせる」この気迫でクラスは少しずつ落ち着きとやさしさを取り戻していった。一番うるさいクラスと評判が悪かったが楽しかったという子どもの感想を残して卒業していった。
 次に担任を持ったときも前年度荒れたクラスだった。私は考えた。印象的な出会いを演出しなければならない。悩んだ末に、始業式で何も見ずに全員の名前を呼ぶことにした。始業式までに全員の名前を出席番号順に暗記したのである。名前を呼びながらその子の顔を見る。初対面で自分の名前を呼んでいるので、あれっという顔をしている。びっくりしたに違いない。全員を呼び終わったとき、ほうっというためいきが教室に流れた。最初の印象は強烈である。ドラマの演出に成功したのである。
 郵便配達員をしていた私は名前を覚えることはプロだった。自分の個性を思い切り出すことで「今度の先生はおもしろそうだ」とか、子どもが担任との生活に期待を持つような出会いを演出することが必要なのだ。
 初日は何とか乗り切った私も、翌日教室に行ってびっくりした。朝の会で、子どもたちが立ち歩いているのである。「席につかせる」というのが、私の最初のルール作りであった。たった一つのルールを示し、繰り返し指示をし、すわっている子をほめるという関わりを繰り返して、ようやく子どもがすわった状態で話を聞いているようになるには二か月かかった。
 たった一つのルールが守れるようになれば、他のルールも守れるようになる。たった一つのルールが定着することでルールが守れるクラスになったのである。これでルール作りは90%終わったと考えていいぐらいである。あせらずに、一つのルールを定着させることに全力を尽くすことが肝心なのだ。あとは守れるルールの種類を増やすことである。
 私たち教師が考えている以上に、保護者は担任の情報に敏感である。ひとたびマイナスの目でみられると、やることをすべて悪いほうに誤解される。いい先生だと思ってもらうと、ひとつひとつ打つ手が決まるのである。だから保護者との信頼関係は極めて重要である。
 どんな保護者でも、担任が「何としてもこのクラスを立て直すんだ」と本気になったら、必ず応援してくれるのだ。クラスをがちゃがちゃにしたけれど、どうにか無事に卒業させた先生だと私は保護者に思われ、協力してもらった。「情報をオープンにすること。ホンネで話し合えること。謙虚であること」こういうことが、縁の下の力持ちになるのだ。そういうわけで、保護者会は「みんなで自由に意見を交換する回覧ノート」を作ることになった。
 私が荒れたクラスから体験して学んだことは、荒れたクラスから逃げるな。クラスを良くするのもダメにするのも、担任の心意気一つにかかっている。力がないなら謙虚に学べばいい。担任が本気で立ち上がれば必ず味方をし、応援してくれる人がいる。謙虚で素直であれば必ず道は開ける。
(
大堀 真:1956年福島県生まれ、郵政事務官等を経験して、福島県公立小学校教師。サークル「TOSS野武士」代表)

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