教師は保護者とどのようにつきあえばよいか
教師は保護者に自己紹介する機会が多い。いろいろ工夫して保護者に親しみ深いものにする。子どもに何かあったときだけ連絡するのではなく、進歩・成長し変化したことも伝えるとよい。
病気で欠席したとき、すばやく電話してようすを聞くことが大切です。親とのつきあいの大事なチャンスにもなる。連絡帳・学級通信などは、事務的な連絡だけでなく、子どもの姿を記し教師の思いや心が伝わるように工夫するとよい。大事なことについては、電話でなく必ず家庭訪問して対話するようにする。
話の通じにくい親ほど、正確な情報がつかみにくい環境である場合が多い。わけへだてなく対応することが重要である。「いつかわかってもらえる」ことを期待しながら、時間をかけ、あきらめずに合意づくりをつづける。とりわけきびしい生活状況下にある親で電話・家庭訪問がむずかしい場合は、手紙がよい。励ます手紙が必要といえる。教師の手紙によって、わが子に目を向けるようになった例もあります。
しかし、それでも話が通じにくいとかれば、他の人の仲介で合意づくりをするのも一つの方法です。間接的に他の人がかかわってくれたことにより、教師の願いが実現したという例もあるからです。
家庭訪問では、忘れ物などの話を先にせず、親との人間的な結びつきができそうな話を先にすると親しみやすい。子どもの長所を見つけ、それを自信にしてやる気を育てるように親と合意づくりをする。子どもの心身にかかわる心配ごとを親から伝えられたら、真剣に対応することを伝え、安心してもらう。
学級懇談会では、親が話しやすいように、日常の班・グループを活用した座席にすると効果的である。話しにくいときは、小さな紙を配布して「話したいこと・聞きたいこと」を書いてもらい、それにもとづいて懇談するのも工夫の一つ。
懇談のはじめは子どもの進歩してきた事実を伝え、家庭での進歩のようすも聞いてみる。欠点や課題は後半で話し合う方が充実する。勉強については具体的な資料を用意し「よい点・足りない点」がよくわかるようにする。親が何をすればよいか理解できるように、具体的に提案する必要がある。
教師が保護者とつきあうとき、気づかうべきことは
(1)保護者と同じ生活者としてつきあう
子どもの親に会ったら「子育てって大変でしょう。いつもご苦労様です」と、自然体で話し合える教師でよいと思います。
教師が一方的に話をするのはひかえる。親の話を聞き出すことに努め、親の関心のありそうな話題でまず話しかけ、親にたくさん話してもらうように心がける。
そして世間話をするといいのです。人は誰もが生活の苦悩を負いつつ頑張っているのですから、その中の喜怒哀楽を共有し合えることが、人間の心を寄せ合ういちばんのきっかけになるからです。
(2)親にとって子どもは宝なのだという認識をもって、子どもにも保護者にも謙虚であること
親にとって子どもは宝であり、苦労しつつ育てています。その親の心を忘れては、親が怒り不信感をもつのも当然です。親の宝である子どもを育てることが教師の仕事です。
親の関心は「子どもを大事にしてくれるかどうか」「情熱があるかどうか」ということ。そのことが伝わるようにつきあう。
(3)新年度のスタートから、保護者とのつきあいにも子どもへの対応と同じように重点をおいて取り組む
新年度の第一日目からでも、「これは話し合っておいた方がよさそうだ」と感じたら、家庭訪問をしてよいでしょう。また「このことはていねいに聞いておきたい」と思ったら、すぐ電話してもよいでしょう。そのことが以後の子どもの指導に、はかり知れないほどの効力をもたらすことを忘れてはなりません。
(坂本光男:1929-2010年、埼玉県秩父市生まれ、小学校・中学校・高校の教師。教育評論家。日本生活指導研究所所長。テレビドラマ「金八先生」のモデル)
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