子どもの心をつかみ、信頼関係をえるにはどのようにすればよいか
子どもの心をつかむには、勉強以外でのつながりをつくることが大事です。その子の得意なことがあれば、いろいろ教えてもらいましょう。叱って言うことをきかせようとするより、遊んだり、一人ひとり何が好きなのかを知って、関係をつくっていくことが、結果的には教師の言うことをきいてくれるようになるものです。
子どもと関係ができていないうちに叱ると「先生は、私を嫌っている」と思って、その後の行動はむしろ悪くなります。叱るより、まず関係をつくりましょう。だれだって自分のことをわかってくれる人が好きなのです。
それには、必ず毎日子どもに声をかけましょう。一人ひとりに目を向けます。その子がこちらを向いたとき目を合わせます。すると、子どもは「いつ見ても先生は私を見てくれていて、守ってくれている」と思います。その子のために、できることをします。忘れ物をしたら、そっと貸します。どのようにかかわるかは、一人ひとりの状況によって違います。その子が元気になるように、やる気になるように、その一点に心を集中してかかわります。「自分は先生にとって特別」と実感すると、安心して子どもが変わってきます。
子どもを伸ばす場合は、まずは、子どものよいところ「1%だけ」を見ます。あとは見て見ぬふり、育ってくるまでほうっておきます。育ってくると、子ども自身で弱点を克服するからです。欠点を指摘すると「わかってるよ」「うるさいな」ということになります。反発を招くなど、いいことはほとんどありません。
ほんのちょっとしたことの中に価値を見つけ、それを虫眼鏡で拡大するように見ます。子ども自身も気づかないことをほめるのです。「1%だけ」でも子どものよいところを見つけてもらいほめられると「そうかな」と、子どもが少しずつ変わっていきます。心を開くようになります。心を開かないと、その先の指導には進みません。「1%だけ」を見るようにすると、いろいろなことが変わってきます。
一番変わるのは教師自身です。子どもに「こんないいところあったんだ」と気づくようになります。教師がにこにこしているから「先生が変わった」と、子どもは教師の努力を感じるのです。そして、教師を見て「自分も変わろう」と思うようになるのです。教師が己を変えることで、子どもを変えることになります。教師の成長が子どもの成長を引き出すのではないでしょうか。
「いくら指導しても、子どもが変わらない」と思うのは、子どもの心のコップが愛でみたされていないからです。心に傷を負った子は、コップが逆さまになっています。愛を注いでもこぼれてしまいます。
愛に飢えている子は、自分に甘く人に厳しい。このような子には、かかわりを密にします。愛された経験がないので、教師の愛にとまどい拒否します。教師の愛が本当かどうか、教師に悪口を言ったり、問題行動をとったり、何度も何度も試します。子どもの否定的な反応は「お試し」なのです。教師の愛情が本物かどうか確かめたいからです。「この人は違う、大丈夫」と、子どもが思うようになるまで、ひたすら、愛を注いでください。
子どもを愛で満たしましょう。問題行動を起こす子のほとんどが、満たされていません。心のコップを愛で満たしてください。愛が満ちると、うそのように問題がなくなります。
(杉渕鉄良:1959年東京生まれ、東京都の小学校教師。「教育の鉄人」と呼ばれる実践家、子どもを伸ばす為に命をかける熱血教師。ユニット授業研究会代表。その実践スタイルは全国の教師、保護者から支持を受ける。2003年夏、日経スペシャル「ガイアの夜明け」に出演。PHP「VOICE」や、経済誌「プレジデント」での教育シリーズに取り上げられ、各方面からの注目も高い。ユニット授業、10マス計算、表現読み、指名なし発言など、子どもの可能性を引き出すため、さまざまな工夫を凝らした教育実践を行っている)
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