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難しい親にうまく対応できることが教師人生を続けていくうえで不可欠である、どうすればよいか

 保護者からのクレームなどによって辞職に追い込まれたり、うつ病になって休職せざるをえなくなる教師が急増しています。中には、一部の保護者から人間性を否定され、心をズタズタにされてうつ病になり「人生の敗北者」になったかのような思いで教師を辞めていく方もおられます。
 「何とか教師を続けたい」という思いを抱きながら、同僚や管理職からの支えも得ることができずに、ただただくやし涙を流しながら教師をやめていく、そんな何人もの教師の「無念さ」が私の脳裏に焼きついています。
 私が長年にわたって教師の支援活動を続けているのは、保護者からの攻撃で辞めていかれた教師の「くやし涙」が頭から離れないからだと思います。そして、あまりに暴力的な仕方で教師を追いつめていった一部の保護者への「怒り」にも似た思いが私にはあります。
 教師の悩みを聴いていて「それは、あまりにも、ひどい!」「相手が教師だったら、何をやってもいいというのか! 教師も人間なんだぞ」と、そんな怒りを感じずにいられなかったことが何度もありました。
 今や「保護者と良好な関係を作ることができること」「難しい保護者にうまく対応できること」が、教師人生を続けていくうえで、不可欠の能力となっているのです。
 では、こうした、やたらと文句をつけてくる保護者にどう対応すればいいのでしょうか。
 まずは、信頼関係づくりに徹することです。学校に批判的な親への対応においては「関係づくり」が何より重要です。
 批判的な親に対して、まじめな教師ほど「正論」で説得しようとしがちです。その結果、親は「どうしてわかってくれないのだ」と教師に敵対感をつのらせることになりかねません。まずは関係づくりに徹することです。そのためには、ねぎらい、とにかく心を込めてよく話を聴くことです。
 じっくりと話を聴き「この先生はどうやら信頼できそうだ」という気持ちを抱いてもらえるまで、ねばり強く対応することが重要です。お茶やお茶菓子を出すことも関係づくりには効果的です。
 クレーマーの大半が「自尊心の傷つき」を抱かえています。クレーマーの保護者はタフで積極的、攻撃的であるように見えます。しかし、内心は自尊感情がひどく傷つけられており、そのことで生まれる痛みが他者への攻撃やクレームとして表現されていることも多いのです。
 教師を大声で怒鳴りたて傷つける保護者自身も「傷ついている保護者」であることが多く、内心は「被害者感情」でいっぱいなのです。したがって、そういう保護者は「自分は大切にされているかどうか」にひどく敏感です。
 クレーマーのこうした心理を敏感に感じ取り、自尊感情に配慮した対応をすることで、クレーマーの攻撃性が緩和されていく場合が多々あります。
 お茶やお茶菓子を出す、来校をねぎらう、よく話を聴く、来校した保護者の人数よりも一人多い人数で対応する。こうした対応で「大切にされている」という感情を抱いてもらうのは大きな意味があります。
 関係づくりが十分にできたところで「お母さん、いっしょに考えていきましょう」と、ともに問題解決を考える姿勢を打ち出していくのです。
 さらに、十分な信頼関係が作れたならば「学校としては、ひとつだけお願いがあるんですけど・・・・・」と切り出していきます。
 教師と保護者との間で「言った」「言わない」の応酬が繰り広げられることが少なくありません。教師が保護者対応において複数(チーム)で対応することによって、ある程度このようなやりとりは回避できます。「複数で対応」を心がけることが重要です。
 クレーム対応がこじれるケースでしばしばあるのは、保護者の怒りを買うのを恐れて、あいまいな回答しかしない場合です。「できないこと」は「できない」と明確に伝えましょう。あいまいな対応に終始すると、「何が何でも実現させる」と保護者の要求はエスカレートしがちです。
 教師が見ている前でいじめがあったときなどのように教師のミスは、最初に明確に謝罪するほうが、その後の信頼関係の回復につながりやすくなります。
 保護者から長時間におよぶクレーム電話を聴き続けているうちに、精神的な疲労で体調を崩す教師も少なくありません。最初に「今日は、○○時までしか時間をお取りできないんです」と時間枠を明示することで、面談を進めやすくなります。教師の自宅の電話番号や携帯番号を連絡網として保護者に伝えることはやめるべきです。
 今、教師のチームワークが弱体化しており、教師の支え合いの欠如が、精神的な健康の悪化に大きな影響を及ぼしています。その要因のひとつに教師の人事考課の問題があります。職員室の人間関係が何だかギクシャクして不協和音が漂っています。教師の支え合いが失われつつあります。「上司・同僚に相談できる人がいる」と答えたのは企業では六割以上いるのに、教師は約14%しかいません。
 教師にとって、同僚や管理職による支えが、教師人生の危機を乗り越えるうえで大きな力になります。その意味でも、教師には「上手に助けを求める力」が求められます。それが、これからの教師に求められる資質であると考えられるのです。
 私は「教師を支える会」で「誰か一人でもいい、職場の中で何でも話せる人を見つけましょう」としばしば助言してきました。そうした人が見つけられない教師は、外部の仲間や専門家に助けを求めることです。
 かつての同僚・管理職、初任者研修のときの同期の仲間、大学時代の仲間、研究会で知り合った仲間などから、一人でも「何でも言える人」「わかり合える仲間」を見つけていきましょう。そんな存在が見つかった教師は、回復を見せていく場合が多いのです。このような仲間の存在こそが、教師人生をまっとうしていくうえで、最大の支えとなるのです。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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