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コミュニケーションあふれる学級にするにはどうすればよいか

 コミュニケーションあふれる学級のモデルは菊池省三の学級です。多くの教師が菊池学級を見て「生き生きとしたコミュニケーションを子どもたちが楽しんでいますね。どのような指導をすればあのような子どもたちになるのか教えてほしいと」といったことが話題になります。
 勉強サークル「菊池道場」の教師たちが、それをまとめると「言葉を大切しあう学級」ということになります。ことばを育てると心が育つ。心を育てたら人も育ちます。
 そのための第一に「成長ノートによる指導」があります。教師が成長に必要なテーマ(例えば、教室にあふれさせたい言葉・なくしたい言葉、過去をリセットして未来をどうすべきか、)を子どもたち与えて書かせ、教師がそれに励ましのコメントを入れ、それをくり返すことで子どもに、成長を自覚させ、教師と子どもとの関係を強いものにするのです。
 第二に子どもたちに「考え方や行動をプラスに導く価値語」(例えば、心で聞く、人の動きを読む、叱られ方をマスターする、挨拶は人をつなげる一言)を積極的教え、その量を増やすようにしています。子どもたちが価値語を作ることもあります。子どもたちの中に、価値語が増えていくと、日常の行為が変わってきます。どうすることがいいことなのかが分かってくるからなのでしょう。
 第三に「対話・話し合いのある授業」です。ペア学習でコミュニケーションの土台をつくります。よりよい話し方や聞き方を教師が教え、実際にやらせてみます。よりよいかかわりを通して次第に子どもたちの人間関係もよくなってくるはずです。基本が身についたら、四人程度のグループ学習を行うようにします。協力することのよさを体験させましょう。さらにディベート学習によって意見や質問などの発言の仕方が身につきます。子どもたちがこの「ルールのある話し合い」を何度か経験すると、決まったことには、たとえ自分の考えと違っても従おうとします。
 第四に「ほめ言葉のシャワー」です。コミュニケーションあふれる教室をつくるために、みんなでほめ合い、認め合いを行います。毎日帰りの会で、一人の子が教室の前に立ち、その子のよいところを全員が自由起立で発表します。ほめられた子がお礼を言って、最後に教師がコメントします。
 温かくて、やさしい教室になります。子どもたちの温かい笑い顔が教室の中に広がります。ほめられた子どもは、みんなが自分を認めてくれたことで安心感がえられます。
 子どもたちの感想は「ほめると、『ありがとうございます』と言われ、うれしくなります。人と人をつなぐことができます。自信がつきます」などです。これらの感想からも分かるように、コミュニケーションのあふれる教室に必要な安定した土台が「ほめ言葉のシャワー」によって築かれます。
 ほめる視点や言葉をもっていない子どもたちには、日ごろから教師が模範となって示し、小さな行動の細部のよさを「ほめ言葉」として伝え、子どもたちに浸透させていきます。ほめられたら、どんな子どもでも「やる気」を出し始めます。それによって子どもたちは「何を、どうほめればよいのか」も、少しずつ分かってきます。つまり「ほめるべきこと」や「どのような言葉でほめればいいのか」がわかってきます。 
 「ほめ言葉のシャワー」がマンネリすると、学級は進化せず停滞し意義を見失い「もうやめようか」となります。その原因は教師のほめる力の不足です。まず教師が、小さな伸びができるようなことを子どもたちに声をかけ、伸びたときにほめるとよい。
 例えば、宿題を提出できない子に「一問だけしておいで」と約束します。次の日に約束どおり、宿題を一問だけしてきました。「約束を守ってえらかった」とほめることができます。伸びたことをほめるようにしたら、どの子でも同じようにほめることができます。
 話し合いができるようになった理由を子どもたちに聞くと「ほめあっているから、心が通じ合ったから、相手の気持ちが想像できるようになったから」と友だち関係がよくなったからととらえているようです。
 どの指導をするときもそうですが、子どもたちに失敗感を与えないことが大切です。まちがったときには、教師のフォローで失敗感をもたせない。まずは成功体験を多く積ませます。
 子どもたちに活発な対話をさせるためには、聞き手の指導がなによりも大切になります。まず「うなずく」ことから始めるのがよいでしょう。その後で「視線を合わせる」「笑顔で聞く」などの態度面を充実させます。
 そして、話し手が話したことを引用(くり返して言うこと)して返事をすると、話し手は聞いてもらっていると感じます。(例えば「朝ごはんはパンでした」、「パンだったのですね」)
 さらに「質問する」「ほめる」など、聞き手としての技術が身につくと、対話が活発になります。聞くことを楽しむことができると、対話を楽しむことができるようになります。
(
菊池省三:1959年生まれ 福岡県北九州市公立小学校教師、2015年に退職。コミュニケーション教育を長年実践した。「プロフェッショナル-仕事の流儀(NHK)」などに出演、「 菊池道場」(主宰)を中心に全国で講演活動をしている。 北九州市すぐれた教育実践教員表彰、福岡県市民教育賞受賞)

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