荒れを克服するには学校と親が共同して取り組むとよい、どうすればよいか
激しい荒れを克服した学校に共通していることは、問題を起こし荒れている子よりも、その親と共同して取り組んでいることである。
子どもの荒れには必ず理由がある。自立のはじまりが必ず悪からはじまるわけではないが、子どもが引き起こす悪は自立のはじまりである。自立と悪は深く関係している。
しかし、大人がどのように自立していったのかは、たいがいの場合は自覚していないものだ。荒れている子どもにも、その理由はわからない。だから、親や教師がその理由をメッセージとして読み取ってやるしかない。「親の言いなりに生きたくない」「こんな家ではオレの居場所がないよ」「もっとオレのことを見てくれ」といったメッセージの相手は親であることが多い。子どもの起こす問題は家族の問題と深く関わっている。
子どもの悪には必ず順序があり、前兆がある。少しずつエスカレートし、徐々に問題のレベルが重度になっていくのが通常である。そうすると、まず私たち教師が着目すべき悪は些細な荒れだということである。
例えば、髪型や服装が目立ち、きまりを守らない。下品な言葉や乱暴な言葉をあびせる。教師や他の子の揚げ足をとったりする。教師や親の反応を試す。退廃的な言動が増える。学級のまじめな風潮を茶化す。これらは放置しておくと、大きな問題行動に発展することを教師は知っている。
荒れのメッセージは自立のメッセージでもある。親や教師に対して発している。このメッセージには共感しても、その言動を認めてはいけない。ここに指導の難しさがある。
荒れを克服した学校の共通点は、この子どものメッセージを読み取ることに取り組んでいる。教師が読み取った子どものメッセージについて親と相談を始めなければいけない。
私の経験では不思議なくらい「私も心配していたんです」と言う答えが親から返ってくる。こうしてようやく親と教師が共同して取り組む体制ができる。この段階でかなりの子どもは踏みとどまることができる。
たとえメッセージが解決できなくても、親や教師にわかってもらえただけで、子どもの問題行動にブレーキがかかることが多い。学校と親との共同は今日の生徒指導には不可欠なのである。
学校と親が共同するため大切なことは、まず信頼関係が生まれなければいけない。教師個人の責任にするのではなく、経験あるベテラン教師が中心になって、日常的に援助する体制を忘れないようにしたい。
次に大切なことは、親と共同するには定期的な相談活動を欠かさないことだ。その場合、必ず成果を親に伝えて、わずかな前進があれば、ほめることが一番である。荒れた子どもの親は教師にほめられたり、認められたことがない。わが子がほめられて気を悪くする親はいない。
三つ目は、一番大切なことであるが、親と共同する体制を一年生のときから始めることである。荒れてしまってから共同しようとしても、もはや遅いだろう。
なかには共同体制のつくれない親がいる。だが、家庭での指導力はないが、親として悩んでいるので、学校にも協力してくれる親のはずだ。私も荒れている学校をずいぶんと経験してきたが、本当に打つ手がなかった子どもというのはごくごくわずかであった。親と共同さえできれば、打つ手があり、荒れるトーンも落ちるだろう。
((吉田 順:1950年北海道生まれ、34年間横浜市立小・中学校教師。生徒指導部長、学年主任などを兼任した。「生徒指導」ネットワーク主宰。生徒指導コンサルタントとして全国の荒れる学校と関わる)
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