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「中学生の叱り方」はどのようにすればよいか

 思春期の中学生は体の成長や心の変化が大きいときです。中学生の叱り方はなかなかの難問です。この難問に悩みつつ、あれこれと工夫を加えている間は、教師としての進歩があるのです。
 子どもの叱り方には「怒る、叱る、注意する、教育する」があります。
 怒るとは、感情が全面にあらわれて、語気はげしく生徒の誤りを指摘するときです。たまにはよいのですが、回数が多いと嫌われます。では、教師が怒ることを少なくするためには、どうすればよいのでしょうか。
 私は、そのために、日ごろから「体と心の健康」「怒る基準」を心に留めるようにしています。教師は体の疲れた日、寝不足や下痢、頭痛など体調が悪いとき、校務が忙しいとき、家庭内のトラブルや職場の人間関係にいさかいがあるとき怒ることが多いのです。教師は体と心が健康であることを心がけねばならない。
 私は、本気で叱るとき、三つの基準を作っています。「生命にかかわるような、いたずらや事件を起こしたとき」「人権に関する、誤った言動があったとき」「犯罪に類するようなとき」、この三つは感情を込めて本気で叱ることにしています。
 中学生でとくに多いのは、他人の体の格好や容姿をなじったり、性格や個性をバカ扱いすることです。
 本気で叱る基準を生徒に示した以上、そのなかみを事前に教えておかねばなりません。人権を尊重することは、人と自分の違いを認め合うことが第一です。正しく叱るためには、何が、どうして正しいのかを教師が日常、子どもたちに教えておかねばなりません。
 中学生の反抗は、どの子にも多少はあることをまず認めておくことです。学力や家庭問題で悩む子、甘やかされた子ほど反抗が激しい。反抗のなかみは、拘束にたいする反抗、自己顕示、教師に対する嫌悪感、神経的障がいをともなった反抗などがあります。
 生徒の反抗の理由について、よく聞くのは大切なことです。しかし、同情して甘くしてしまうのは危険です。教師は真剣に良し悪しをはっきり示し、首尾一貫するようにします。ただ、反抗期の子どもは、扱いを大人に近づけて指導するのがよいでしょう。
 子どもを叱るときは、目を見て叱ります。長時間のときは、横に座らせ同方法を向いて叱るのもよい。
 叱り方でよくないのは皮肉、いや味をいう、冷笑する叱り方です。「どこまで根性がひねくれてるんだ。バカ」と人格を傷つけてはいけない。
 公平に叱ることも大事なことです。力の弱い生徒に厳しく、強い生徒に甘い叱り方はよくない。気の弱い声の小さい教師は、やさしい言葉で声をかけよう。見て見ぬふりをするのがいちばんよくないのだから、叱れなければ、注意の声だけはかけるようにします。
 日頃の教師の素直さ、人間くささが、子どもたちとの人間関係をあたたかくしていきます。
 生徒がケンカや暴力傷害事件、万引き、窃盗、家出などの事件を起こしたときはどのように叱ればよいのでしょうか。
 まず、子どもの言い分をよく聞きます。そのなかで事実関係を詳細に調べます。発生の原因から考え方、感じ方まで調査をします。ふかく非行の要因をさぐることが、深い指導を可能にするのです。
 ふかく詳細に調べたあとは、ねばりづよい指導です。生徒の心を動かし、考え方を変えていくためには、くり返し時間をかけて叱らねばなりません。たとえば、毎日十分づつ、生活日誌を書かせながら、時間をかけて指導するほうが教育的な叱り方です。
「厳しさも愛」、そして最高の叱り方は「愛と忍耐」です。小声であっても、やさしい言葉であっても、長いねばり強い叱り方こそ教育的なのではないでしょうか。
 このような叱り方を全教師が習熟していくことが大切です。一部の教師の名人芸でなく、全体のものにしていくことです。叱り方の交流会を職場で開いてみてください。教師集団の討議や叡智が生徒の叱り方の改善と工夫の原動力となるでしょう。
(
編著 能重真作:1933年千葉県生まれ、元中学校教師。1979年非行とその克服の記録『ブリキの勲章』が話題となり映画化された。教育評論家。NPO法人非行克服支援センター理事長)

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