騒がしい教室を変えるには叱る以外にもいろいろな方法がある
1995年ごろから、子どもたちは授業を始めても、なかなか集中してくれなくなりました。騒がしい教室が増加しています。学級崩壊の特徴は、私語と立ち歩きです。学級崩壊は今なお解決されず日常化しています。
教室が騒がしいときの対処法には「叱ってやめさせる」「教室の空気を変える」「私語や立ち歩きを活用した学びにする」の三つの方法があります。
(1)叱ってやめさせる
毅然とした態度で叱ります。最低限のルールについて、その善し悪しを明示し、断固として叱る指導法です。
しかし、この指導方法には「説得力がある」という限定条件がつきます。私語を叱ってやめさせるには説得力が必要です。叱る言葉の中に「なぜかということ」を入れて、強い理由を示すと効果があります。
例えば、ザワザワしている子どもたちに「静かにしなさい」と叱っても、「なぜ静かにする必要があるか」、子どもたちを納得させる説明ができる教師は案外少ないのです。そういう言葉の力の弱い教師が、いくら「毅然とした態度」で子どもたちに叱っても、逆効果になることが多いのです。
(2) 教室の空気を変える
私語する子どもと対決せず、教室の空気を変えて子どもたちの学びをつくります。
例えば、授業の導入で子どもの気持ちを引きつける。子どもをのせる楽しい活動をする。同じ活動をダラダラ続けせない。子どもたちのなかで流行している話題を自然に教師のトークに入れる。授業中に一回ぐらいはわざと脱線話を入れる。体験型の学び合いを取り入れる。息抜きの時間を設定する。競争の方法を工夫する。などです。
今は、子どもたちを授業に誘導する技術が必要です。例えば、授業に入るときに、漢字クイズ(例:三分間で木のつく漢字をたくさん書きます)のような「ちょっとした学習遊び」をぜひ試してみてください。遊び感覚で子どもたちの気持ちを授業に誘導することができます。三分と時間を設定することで授業に集中できます。
漢字クイズを列ごとに発表してもらいます。「エイです」「エイ?」「栄養の栄です」「おお!」といった教師と子どもが一対一の会話場面をつくると、子どもに強く響き、他の子どもも記憶に残ります。
学習クイズは三択がよい。選択肢があれば、いずれかに手をあげて全員が授業に参加できるからです。
「静かにしてください!」と言っても静かにならないときがあります。そこで、競争意識をくすぐり、遊び感覚でできる「何秒で静かになれるか競争」をしてみましょう。「今回は55秒で静かになりました」「今回は25秒で静かになりました」と言ってみると「早く静かにしよう」という動きがクラスに広がることがあります。
子どもたちは一つのテーマで学習を続けると飽きて教室の空気が重くなります。国語であれば、漢字、音読、読解などを5分、10分のユニットにしてパーツを組み合わせます。このようなユニット型授業が増えています。つぎつぎと内容が変わるので飽きません。
教師が板書するときに「5月6日」を、わざと「6月5日」に間違いをして、子どもたちがツッコミを入れると教室の空気が明るくなります。子どもたちは教師へのツッコミどころを期待して集中して授業を聞くようになります。安心してツッコめる教師の明るいキャラづくりも重要です。
バラエティ番組をチェックして、お笑い芸人のネタをからめ、引用したりするほうが子どもたちに伝わります。「脱線トーク」は教室を引き締める高等技術です。授業がひと段落したときなどがいいですね。
(3) 「私語」や「立ち歩き」を活用した学びにする
従来の授業は、おとなしく座って黙って教師の話を聞くことが前提になっていました。これを前提にした授業がやりにくくなっています。しかし、これを前提にしない授業もあります。学習者の活動を中心とした授業です。
例えば、体を動かせる活動を工夫する。板書は教師がするだけでなく、子どもたちもする。子どもの自己表現ができる場をたくさん用意する。ペア・グループ学習をする。などです。
例えば、賛成・反対の理由をノートに書いた後、立ち歩きをして、ほかの友だちの「いい書き方」を見て回ることで、学び合いが加速されます。学習の振り返りをするときは、全員が黒板に短く書くといいですね。書かれた感想を読みながら、全員で振り返りを共有できます。
グループ学習を授業に取り入れると、友だち同士だから言える意見が生まれたりして、違った学びが生まれます。グループは4人が基本です。じゃんけんでリーダーを決めます。
(上條晴夫:1957年山梨県生まれ、小学校教師(10年)、作家、教育ライターを経て東北福祉大学教授。学習ゲーム研究会代表、お笑い教師同盟代表、実践!作文研究会代表)
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