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保護者からのクレームを未然に防止するにはどのようにすればよいか

 保護者と教師の間に厳しい状況が起きるような保護者のクレーム問題は、子どもと保護者と教師の三角関係の中で起きます。
 「教師と子ども」の関係、「親子」の関係、「教師と保護者」の関係の三角関係を良好に保つこと、これが問題の未然防止に必要なことですし、問題が起きた後でもめざす方向は、やはり三者の関係が良好になることなのです。
 教師に対して保護者が不信感や要求を持つのは、わが子を教師が大切にしていないと思ったときや、わが子が教師を嫌っていると思ったときである。
 保護者からのクレームを未然に防止するには、子どもが学校で確実に成長していることを保護者が理解してもらうことである。子どもを成長させるために、教師が何をしているのかが保護者に伝わること、教師と子どもが良好な関係であることを、子どもを通して保護者に伝わることが大原則である。
 保護者からのクレームが教師にとって落ち度があまりないと思われる場合は、教師は保護者のことを「わがままな親」「理不尽なことを言う親」「被害者意識の強い親」「わが子中心の親」などと思い「あの親は・・・・」という言葉が出てきます。このような親に対する教師の思い込みが、教師と保護者の関係の改善を邪魔します。
 保護者のクレームには、不満の積み重ねが考えられます。懸念を伝えたのに真剣に応じてもらえなかったり、保護者自身が育ってきた環境のなかで出会った教師や学校で理不尽な扱いを受けた体験があるのかもしれません。
 そのため、怒りをもって伝えないと、学校に通じないという保護者の思いがあれば、怒りが前面に現われてきます。扱いにくい保護者であると教師が受け取ると、教師は関わりを避けたくなります。そうすると保護者は「担任が私を嫌っている」と感じます。
 教師も保護者も上手に対話して、関係を回復していくことが苦手になってきています。自分の要求を上手に伝えることや、要求を上手に断ることや、相手の要求と自分の要求との接点を見いだして妥協することや、新たなアイディアを創出することなどが苦手になってきました。
 トラブルが生じたとき、事実確認と同時に、そのときに子どもが感じている怒りや辛さなどの不快感を教師が受けとめ、関係した全ての子どもを安心させることが大切です。そのうえで、子ども同士で解決できるように手伝うようにします。
 保護者からの電話は、とにかく聴くことに徹する。そして「私はこのように受けとめましたが、それでいいですか」と確かめるのです。そうすることにより、保護者は受けとめてもらったと実感し、教師も落ち着いて答えを考えることができるようになります。
 トラブルの事情が本当にわかるためには、起きたことと、そのことへの解釈、評価、考え方を分けて教師が理解し、受け答えする必要があります。その際、保護者の感情を読み取って「○○とお考えなのだとしたら、お腹立ちでしょうね」と伝えねばなりません。
 このようにして保護者との関係を上手につくった後で、要求の調整に入るのです。
 トラブルが多い子どもを担任したときは、保護者との接触が多くなることが予想されますので、信頼関係を築く必要があります。まずは、子どもができるようになったことや、その子のよさを惜しみなく、電話や連絡帳を活用して保護者に伝えるようにしましょう。
 保護者が担任からの電話を楽しみにするくらい信頼関係ができると、「お子さんのことで心配なことがあるんです」と伝えたときには、保護者は抵抗を持たずに受け入れてくれます。些細なことでも、保護者の担任に相談してくれるほどの信頼を得ることをめざしましょう。
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小林正幸:1957年群馬県生まれ、東京都港区教育センター教育相談員、東京都立教育研究所相談部研究主事等を経て東京学芸大学教授。不登校を始め学校不適応、ソーシャルスキル教育、教育相談、教育技術を研究)

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