中学生をやる気にさせるコツとは
私は、人間というものは「やる気」を持つことによって、どれだけ自分の可能性の花を開かせ、大きく成長するかを、多くの教え子の姿から学んできました。
やる気の火種は誰にでもある。もとは小さな火であったはず。その小さな火も、実行が伴うことによって、どんどん大きくできる。子どもの気力はどこから生まれるか。それは、その子どもが持った「自信」だ。自信さえつけば、もうしめたもの。あとは自分でどんどん大きくしていく。
中学時代は、ゆれ動きの激しい時期です。思春期のまっただ中の時代であり、この時期をどうすごしてゆくかが、子どもの長い人生に大きなかかわりをもってくるでしょう。
それだけに、親や教師の対応は重要な意味を持っています。子どもがやる気を持つのも、持たぬのも「親しだい」「教師しだい」と言っても過言ではない事例にたくさん出会いました。
子どもを「やる気」にさせるポイントは「子どものよいところを見つける」ことです。
やる気を起こさせるには、小細工も計算もいりません。子どものよいところを、心で感じたものをプラス・メッセージで、湯気の立っているうちに伝える。これだけでよいのです。
よいところとは、長所、取り柄、ホッと心が温まったり・うれしく思ったことです。親や教師は、あまりにも近くで子どもを見ているので、子どもの欠点を見つけるのが得意です。
中学生を「やる気」にさせる接し方のポイントは、
(1)自信を持たせる:「なかなかやるじゃない」と、子どもの自信を定着させる。
(2)関心を示す:子どもが関心を示してほしいというサインを感じると、「がんばっているな」と思うことに関心を示す。
(3)失敗に共感し、アドバイスを:くやしい思いに共感し、「どこを直したら、うまくいきそうかな」と、再起の力をわかせるのです。
(4)努力のすばらしさを教える:大人の努力している姿を子どもに見せる。
(5)子どもの興味・関心を尊重する:打ち込めることを体験させ、あまり目先のことに目を奪われないほうがよい。
(6)心からほめる:お世辞ではなく、100%、心から喜び、感激、励ましを表現する。
(7)どこかに可能性があると信じさせる:「なかなか目のつけどころがいい」と、迷える中学生に可能性の光を与える。
(8)その子の伸びを指摘する:その子どもの成長を具体的に指摘して、それを本人に自覚させる。
(9)信頼すると意欲がわく:教師に不信感を抱いている生徒はその教師から学ぼうとしない。教師が子どもに信頼感をよせると子どものやる気を引き出すことが可能になる。
(10)尊敬するとやる気がわいてくる:「すごい」とその人の力量に尊敬の念を抱くと、まねでもいいから、その人に近づこうとします。
(11)上手に叱る:「ここをこう直すと、もっと光が出てくるよ」と、子どもに期待感をもった指摘をする。
(12)公平に子どもを扱う
長い教職生活の間には、本当に苦しんだこともありました。「自分には向かない仕事なのかなぁ。もう、きょうでこの仕事にピリオドを打とうか」と、考えこんでしまう事態もありました。
生きがいを与えてくれたのは、子どもたちであり、保護者でした。保護者と額を寄せ合い「あの子のやる気をどう掘り起こしていったらよいか」と考え、ちょっとしたアドバイスで子どもがモリモリやる気を出し、はつらつとした姿で物事に取り組むようになったときは、「教師の仕事って、本当にいいなぁ。こんなに喜ばせてもらい、楽しませてもらって、そのうえ、給料までもらえるんだ」と思ったものです。
(山田暁生:1936年~2008年、和歌山県出身、東京都公立中学校教師(35年間)。山田中学生問題研究所代表、全国教育交流会「やまびこ会」主宰。学級・学年・数学・進路通信などを約3万枚発行し、保護者や生徒とのコミュニケーションに力を入れてきた。「読売教育賞・賞外優秀賞」受賞。NHKラジオ第一「子どもと教育・電話相談」レギュラーアドバイザー、テレビ寺子屋講演講師なども務めた)
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